第八話
テストの順位が発表された次の日から次々と私に不思議な事が舞い込んでくるようになりました。決して、頭によぎったピンク髪のお花畑ではない……と願いたいですが、どうやらそうもいかないみたいです。
なぜか彼女は私を標的にしたみたいで、朝から一生懸命に紙を配っている。紙も高価なのに、よくそんな事ができるなと感心してしまいます。
そう思いながらも彼女と遭遇しないように、細心の注意を払って教室に入ると、ルーシア様に声をかけられる。
「アリシア様。これを……」
そう言って見せてくれたのは丸っこい字で書かれた文字……なのかな?
なんて書いてあるのかわからない。どこかの国の言語か、それとも異世界言語なのかな?
「なんて書いてあるのかはわかりませんが、配っている時に大声で「アリシア様の正体が書かれています。是非ともご両親にお見せください。そして、皆さんも付き合い方を考えてください」と言っていたのですが……内容が分かりませんし、ちょっと関わりたくなかったので……」
言いづらそうにするルーシア様。止めるべきだと思っていたけど読めないし、関わりたくないから放置したことを気にしているのでしょうか? そんなの全く気にしなくていいのに。
私がルーシア様の立場ならこんな報告もせず、完全に無視します。
「ルーシア様、気になさらないでください。私は彼女を見ただけで無視を決め込みましたし、伝えていただきありがとうございます」
「いえ、そんな……」
少し照れているルーシア様。そんな彼女を見ていると、ヒョイッと持っていた紙を取られる。取られた方を見てため息をつく。
「はあ、お姉様。取るなら取ると言ってください」
「ごめん、ごめん。あっ、これ日本語だね」
「「ニホンゴ?」」
「聞いたことのない言語ですが、どこか遠い国の言葉なのでしょうか?」
「えっ、そ、そう。うんと遠くの国だったと思う」
「さすが、シェリア様ですね」
リリア様の質問に、誤魔化すように答えるお姉様。そして、その答えを聞いて褒め称えるリリア様と、少し疑うようにお姉様を見ているルーシア様。この辺が貴族の位の違いなのでしょう。学力ではない部分がやっぱり違う。
これを異世界言語以外にどうやって伝えましょうか。
「えっとね〜、コレは「それで、シェリア嬢。その紙にはなんて書いてあるんだい?」あっ、そうですね、この紙には『アリシアは元平民である。』って書いています」
「……それだけですか?」
「それだけよ」
「えっと、私が平民の出であることは有名ですよね?」
「そうですわね。アースベルト家が優秀な子を養子にしたというのは有名な話です。それに、アリシア様は学年一位をお取りになったので、アリシア様がその養子なんだというのは誰でもすぐにわかったと思います」
代表して、ルーシア様が答えてくれる。つまり、彼女…ミラさんは、誰でも知っている事を大々的に言っているということですね。しかも誰にも読めない字で……なんて無駄なんでしょうか。
「まあ、計算用紙としてありがたく受け取っておきましょう。紙も高いですから。私のような下級貴族にとっては一面だけでも使える部分があって嬉しい限りです」
「そう、ならこれもあげるわ」
「ありがとうございます」
リリア様の発言にルーシア様がもらってきた紙を渡す。確かに計算用紙としてはありがたいですね。そのまま捨てるのも勿体無いですし、利用できてよかったのではないでしょうか。
「くくっ」
「どうしたのですか、リオン様?」
「いや、なに。彼女の家、レーソン家も男爵なのだが、リリア嬢とは全く違った考え方をしているのがな少し面白く感じてね」
「それは不正をしている……ということでしょうか」
「レーソン家は商家だからね。何か一山当てたか、それとも……まあ、今すぐにはなんとも言えないかな」
「そう……ですね」
けれど、やっぱり彼女は警戒しておかないといけないのでしょう。
入学式以来、関わってこないと思っていたのに、どうして今更関わって来たのでしょうか?
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