◆ 20・血塗られた道を行く者(後) ◆
「ちょ……シャレにならないって!! ルーファ何してんの?!」
干渉はできない現実世界を見る。
そこではルーファの手が、妹の髪を掴んだ所だった。
うめき声をあげて引き起こされる彼女に、我を取り戻したスライ先輩が止めようと行動を起こす。
だが、それすらもルーファは当たり前のように察知していたのだろう。妹の体を引っ掴み、スライ先輩目掛けて放り投げた。
宙に浮くフローレンス。
派手な音を立て、スライ先輩をクッションに二人は転がった。
ライラが厳しい顔でルーファを見ている。
ちょ、マジで、どうするのっ!? ルーファ……、いや、でも、あいつ悪魔だったわ!! そうだわ、ついつい相棒感覚で仲間感持ってたけど、悪魔だったわ!!!!
そこで、くだんのルーファの恋人と目される天使の存在を思い出す。振り仰げば、彼女は額を抑えている。
「……ち、まみれ……」
呟く顔は蒼白だ。おっさん天使は目を閉じる。
「今でこそ魔王って言えば5匹だが、昔はもっといたんだぜ? ある時期に激減したのさ。まぁ、理由はお察しだな」
「いや、全然察せないです!」
「分かるだろ、この流れなんだから。もっとも、血塗れルフスがした事は魔王の処理だけじゃないがな」
つまり、いっぱいいた魔王をルーファが倒したと?
昔は勇者やってたって言ってたし、そこは納得だけど……。
スライ先輩が、ライラが地面に叩き伏せられる音が、現実を伝えてくる。
考える時間は短い。
えーっと、整理整理!
ここは一段階上の世界で、天使の町……。エルロリスが混ぜ込まれた魂から派生した疑似天使もどきが私で、あの呪文で堕天したと。
うん、わからん。
そもそもなんでこんな一段階上の世界にきてんの!?
しかも、魂の双子感あるエルロリスが、役立たずと来てる。
「人間の体と魂は呪いで繋がれてて、天使は愛を受けているから……どう、なんだっけ?」
ヤバイ、覚えてない!! カエル、今こそアンタの頭がいるのに!!!! いや、待って、一段階高いなら、一段階下がればいいわけで?
エルロリスを見る。
彼女は本物の天使で堕天もしていない。
私たちの魂が双子で関係しているなら、この場所に来れた理由の大半は彼女だろう。いっそ、この見えたり見えなかったりする状態は私の堕天が足を引っ張っている可能性がある。
もし、彼女一人ならエルシアと一緒に天界に戻れた気さえする。
あぁ、わかった……『下』に降りる方法が! でもこの方法は……っ。
天使のおっさんを見る。
もし間違っていたら、とんでもない怒りを買うかもしれない。それでも目の端にチラチラと映るライラが、スライ先輩が――フローレンスが。彼らを思えば、行動を起こすべきなのだ。
エルロリスも……堕天させる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます