死亡回避困難で悪役令嬢は鬱ってる。―理想ENDは天使も悪魔も出し抜いて大往生ですけど?―

ムツキ

序章・はじまり

◆ 0・ささやかな幸せ ◆


 ……おはようございます、世界の皆様。

 シャーロットです。

 シャーロット・グレイス・ヨークです……。


 まぁ、実は完璧なる悪役令嬢ウン10回目だ。


 そのうち刺殺7回、焼死2回、水死4回、転落死8回、銃殺1回、獣に食わされたりも、後は……うん、数えてもない分だとて中々にある――もう殺され役からの回避が難しすぎて蘇りと同時に呆然としている。


 ちなみに誰にどう殺されたかも全部覚えている。


 それでも回避出来ないのは毎回展開に差異が出るからだ。

 期間についても1時間ENDから10年ENDと様々に体験してきた。

 やり直し期間全て含めれば80歳になる。


 始まりはいつも同じ、16歳の誕生日でベッドから起きた所からだ。


 勿論、目覚めは最悪だ。つい今しがた息を引き取ったのだから当然だろう。悪夢じゃないのかって?

 そんなレベルの話は片手で数えられるリスタートの内に終わったさ!


 不機嫌な気分すらもない。


 そんな労力はどこにも残っていないさ……逆に叫べる奴がいたら私が勲章を差し上げたいので申し出て欲しい。尤も現在の置かれた状況を何度か出来た『友人』枠の人間に相談した事もあるし、実際に『ぶっちゃけた』事だってある。


 どうなったかって?


 2択さ。

 病院送りと幽閉――行きつく先は何故か自死のみ!

 飲まされた薬が可笑しかったとしか思えないよ。でもいいんだ、もう誰にも打ち明けないって決めたからね……独りぼっち、全然寂しくないさ……あぁ寂しくないとも。忙しいんだ私はっ!


 だから……――。

 今この時、この時間だけは私の平穏だ。

 ベッドで仰向け、呆然自失で小鳥の囀りを聞いたまま――ゆったりとメイドの入室まで時を過ごすのだ。


 この時間だけが私に許された、ささやかな……ささやかすぎる世界から賜った愛のような物だ。



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