第50話:黄金の誘惑、恐怖のお宝ツアー!?②
(ぬ、盗むって言ったか今……?)
「ビ、ビター」
近くにいたメルトがビターの裾を引っ張る。
メルトも気づいたらしい。
「と、止めた方がいいわよね」
「……おめェは危ないから引っ込んでろ。俺がいく」
向かおうとした矢先、
「もしもしそこのお三方。あなた方は泥棒ですか」
フィナンシェがいったー!!
「お金は払わなくちゃダメですよ。カウンターはあちらです」
フィナンシェの前足を肩にのせられた泥棒の一人(金髪モヒカン)がビクッと跳び跳ねる。
「バレた! 逃げるぞテメーら!」
「「ガッテン承知だぜアニキ!」」
風呂敷にありったけの品物を詰め込むと泥棒三人組は店から猛スピードで飛び出した。
「あ! コラ待て泥棒野郎ッ!!」
ビターは秒で会計を済まし店を飛び出すと三人を追いかける。
「待て待て待てエエエェェい!!」
「うわッコイツ足早ぇ!」
「何だこのリーゼント何者だよ!」
金髪モヒカンとひょろ男の二人がぎょっとした顔で振り返る。
「このクソ泥棒がッ! 俺らなんかギリギリでいつも頑張ってんのにテメーらだけ好きなだけモノ盗んで楽する気かアアアァァ!!」
「俺たち関係ないだろ! まるっきり私怨じゃねえか!」
「つか俺たち泥棒じゃなくて盗賊だっての!」
「知らねーー!! オラ早く止まれーッ!」
「はあ……はあ……」
残りの太っちょの盗賊だけ足が遅かったので追いついた。
「おら金払えゴラァ!」
「ひぃぃ」
首に腕をまわし出ている腹をぱよんぱよんつっつく。
端から見たらこっちがカツアゲしてる図だった。
「ひぃぃ兄貴たち~助けて~!」
「「シュガーの肉をつつくな!!」」
ドガアッ!
飛び蹴り(×2)を喰らった。
「ッぶふぉあッ!? 目と鼻と口に砂がァー!」
めり込んだ砂上でビターがのたうち回ってる隙に二人の盗賊は太っちょ盗賊を抱えて遠くへ逃げていく。
「あ! まてテメーら!」
立ちあがり追いかけるも巻かれてしまった。
「クソ、どこ行きやがったアイツら!」
「ビター! あった! あったわよ!!」
「おぉメルト! いたか! どっちだ」
連れていかれた先にはニヤニヤ怪しく笑うおっさんが立っていた。
「激安ツアー! このおっちゃんやってるんですって!」
顔面から砂にスライディングした。砂はほのかにシナモンの味がした。
「テメェェェ今それどころじゃねェだろ! 探してたのドロボウ! 」
「私はずっと安くて行けるツアー探してたの。せっかく観光来たのに何もなしで帰るのイヤだもん」
「ねぇ~観光したいよねぇ」
メルトに便乗してくねくね踊るおっさん。
妙に馴れ馴れしく胡散臭い。
「只今激安ピラミッドツアー案内中で~す。一人たったの2000キャンディー」
「2000!? ツアーで!?」
「お得だよ~。キャラメル工場見学からキャラメル作り体験にお土産タイム、目玉のピラミッドも見られるよ~」
このおっさんの胡散臭い顔スゲェ見覚えあるな。
どこかの常夏の国で会ったしまりのない笑みが脳裏でちらつく。
(親戚?)
「ていうか前にあったぞこのパターン……」
今回はやめておいた方がいいんじゃ。
「ほらチケット買っちゃった!」
「デジャヴーッ!!」
メルトとフィナンシェはお土産代の残りでチケットを買ったらしい。安っぽいデザインの紙切れを手に握っていた。
「兄ちゃんも買っちゃいなよ。このツアーに参加すれば探してるドロボウも見つかっちゃうかもよ~?」
「明らかな大嘘だろ!」
百パー口から出任せにおっさんの胡散臭さが倍増する。
「まあまあビター。私たちドロボウ探しじゃなく観光しに来たのよ? 捕まえようとしただけでも善行だって。あんた良いことしたよ。それに見てよ、ほら」
「ん?」
「(わくわく)」
フィナンシェがいつになくキラキラと目を輝かせていた。未知なるピラミッドツアーに彼の好奇心が刺激されたらしい。
ご機嫌メルトにうきうきフィナンシェ。その間にニヤニヤ怪しいおっさんが真ん中に挟まれている。
「はあ、ったく」
「はぁいまいど~♪」
ビターたち三人は激安ピラミッドツアーに参加することになった。
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