第49話:黄金の誘惑、恐怖のお宝ツアー!?

ビター、メルト、フィナンシェの三人組(二人と一匹)はみたらしの園から北へ進んだ砂漠の中にある村の【キャーメル村】に辿り着いた。


「暑い。暑すぎる」


「季節的には秋なのにここら一帯だけ真夏のようだわ」

「フルーツアイランドを思い出しますね……溶けそうです」


キャーメル村は砂漠の真ん中にある村で、言うなれば砂漠地帯にある唯一のオアシス(大将借りたぜ)。


茹だるような熱気を浴び汗は服を濡らす程ビショビショ、三分おきに水筒を傾ける程の喉の渇きを覚え、蜃気楼で目の前に歩く人間の足元はぐにゃぐにゃに見えた。


軽い気持ちで観光に来たことを後悔した。


「見て、あの鳥、水瓶の中で狂ったように水浴びしてる」

「鳥だって暑いんだろうよ」

「でも村の人たち涼しい顔して歩いてるわね。暑さに慣れちゃったのかしら」


確かにあぢぃぃぃ!! と叫んでるのはビターたちのような観光客ばかり。

地元らしき人たちはクールな顔つきで水瓶や桶を運んでいる。


「きっと感覚がマヒしちまってんだよ。あー俺も早くあっち側へいきてェ」

「あんたはどう見てもあっち側の人間でしょ」

「あっちってどのあっちだよ」

「YA・KU・ZA」

「殺す」

「どうどう落ち着いてビター様」



それより先に日光に殺されそうになったので近くのカフェらしき店(全部布地のテントなので区別つかねェ)に入ってスイーツを頼むことに。

店の中の温度計を見たら外気温と全く同じで全員白目を剥きながらスイーツを待機。


「お待たせしました。当店自慢の品・キャラメルプリンセスでーす」


器に盛られたバニラアイスの上にたっぷりとキャラメルソースと細かく砕かれたキャラメルがごろごろのせられた品だった。


「うひゃああアイスクリーム! 冷たくて美味しい~!」

「なんかもう、アイス自体に感動してる俺がいる……」

「このキャラメル、程よく凍らされてて噛んでも歯にくっつかなくていいですね」


「あんたたち、味に感動しなさいよ」


ガツガツ食べるヤンキーとロバを尻目にメルトが呆れた顔をした。


「……にしてもキャラメルたっぷりね。こんなに贅沢に使って大丈夫なの?」


メルトの質問に店員のお姉さんがニッとニヒルな笑みを浮かべて答える。


「はい。なんせこのキャラメルはキャーメル砂漠にある岩“キャラメルストーン”から採れたキャラメルを使ってますから。あの岩無限に転がってるので。無限に取り放題、無限に集められます」


「ええー!? 岩からキャラメルが採れるの!?」


「砂漠でデロデロ溶けてる岩がそれです。陽光に照らされて溶けた部分を容器で集めてミルクを注げばキャラメルソースの出来上がり、冷やせば固形キャラメルになります」

「すごい!」

「でもなんか虫がたかりそうな砂漠だな」


夢のある話だが同時にゾッとする想像もしてしまう。


「それは大丈夫ですよー。ミルクとか入れなければ無味無臭のただの岩なので。ちなみに溶けてるのは昼間だけで夜風になれば固まります。砂漠の夜ってめっちゃ寒いんですよー」


「「へえ~」」


「ちなみにピラミッドに使われてるのもキャラメルストーンです。もちろん昼間は溶けますがミルク入れなければデロデロのただの岩の方なので。綺麗なピラミッド見るなら夜がおすすめですよ。昼間のピラミッドにミルクかけないでくださいね。ミルク入れたらキャラメル化して観光客がペロペロ舐めちゃいますから」


「「はーい」」

「ふむふむ、なるほど」


店員さんのトリビアを聞きながらキャラメルスイーツに舌つづみを打つ。


変なお面に変な楽器。

独特の文化に触れビターはなんだか楽しくなってきた。


「そういえば死んだ人を乾燥させるミイラって文化もあるんです」


「なんか怖いわね」

「そういえばピラミッドとは古代の王様のお墓らしいですね」

「ロバさん物知りですね。それには……」


フィナンシェと店員さんの話がやたらとコアな話題になったのでメルトとビターはその後の予定を経てた。




メルトが土産屋に寄りたいと言ったのでビターたち一行は村の土産物店に寄ることになった。


「わーいお土産屋さ~ん」


「おっし土産買ってさっさと次の場所行くか」

「もう!? もっと観光しないの!?」

「観光って他にどこあんだよ」

「ピラミッド! 和菓子通りの奥さんが言ってたじゃんピラミッド最高~って! 私も見たいツアーしたい」


「でもそういうツアーって高いだろ。見ろよこれ」


デデーン!


そこにはツアーのポスターが貼ってあった。

値段を見る。一人一万キャンディー。


「無理だろ」

「ケチ」

「まあまあメルト様、ビター様は我々の旅の資金を見積もってくれてるんですよ。メルト様にもお土産代くれたでしょう。ほら、特別に美味しいお土産買ってあげますから」

「おい、それはフィナンシェにあげた小遣いだろ。あんま甘やかすな。つけあがるぞこのガキ」

「うへへーつけあがるー」


ベロを出しながら店の土産を物色し始めた。ほれ言わんこっちゃない。


「自分も見てきます」

フィナンシェも好きな所を見始めた。



「……ピラミッドツアーねぇ」


その場に一人になったビターはポスターをもう一度見て呟く。


「そりゃ俺だって金があれば行きてェけど。激安ツアーなら……いや、激安ツアーはなしだな」


以前の常夏の激安ツアー(詐欺)で格安系には懲りてるので行くならちゃんとしたツアーで行きたい。ましてや王の墓なんて呪われそうだし。



(……ん? あそこの連中……)



店の隅。


いかにも怪しい出で立ちの三人組が土産店の端っこでこそこそ何かをしている。


ガタイの良いのからひょろい奴まで体型は三者三様だが、三人共サングラスをかけ背中にでっかい風呂敷を背負っている。


「(……)」


棚の商品を見るふりをしながら三人組の方へ耳を傾ける。


「“バター”兄貴これはどうっスか?」


「バカか“チェダー”!? それは稀少価値が低い。闇市でも高く売れんぞ。お前はもう少し審美眼を持て末っ子の“シュガー”みたいに」


「そのシュガーは食べ物の土産品しか持ってきてないみたいスけど」


「バター兄貴とチェダー兄貴~あっちに試食たくさんありますよ~食べにいきましょうよぉ」


「バカかオメェ! 何しに来たと思ってるんだ!」


「そうっスよシュガー! 少しでも値のあるモン盗って闇市で荒稼ぎするんでしょ」



物騒な会話が聞こえてしまった。

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