第10話:知識はチョコレートに混ぜて4
そこには白い円筒のような姿をした
「ねぇ、あれってバウムの森で遭遇した焼き
「くそッ。どうなってやがる!」
「シュシュシュッ」
白い
丸く柔らかそうな可愛らしい形態だけに動きと合わせてやたらコミカルに見えるが、町の人を脅かすその行動は邪悪な
「キャーっ!」
金髪少年の側にいた女性二人組が
白い
別にあれに殴られても痛くもなさそうだ。
なんて緊迫する場面に緊張感なしに考えてしまうビターだが、恐怖に脅える人々を放っておく程自分は冷酷ではない。
ビターが女性たちの元へ駆けつけようとすると、
「彼女たちは僕が守る!!」
金髪少年が女性たちの前に割り込み、白い
「おおっ」
「やったか!?」
メルトとビターが思わず叫ぶ。
しかし、
金髪少年は反動で遠くへ吹き飛ばされてしまい、
「いやぁぁぁ!」
女性たちも町の人々も諦め、目をつぶる。
その時ーー
ドガーーンッッ!!
ビターが白い
「俺を忘れてんじゃねェ!」
体の中心部を貫通された
「さっすが!」
倒れた金髪少年を介抱しながらメルトがサムズアップする。
「ヤンキーはケンカに強い」
ビターもメルトに向けてサムズアップした。
夕陽の沈む町の広場の噴水前のベンチにて、金髪少年はベンチに三角座りで泣いていた。
「僕は……何も出来ない。お菓子も腕力も、何もかもあの訳のわからないヤンキーに敵わない……」
「あんたボロ負けだったもんね」
付き添いで隣に座るメルトが歯に衣着せぬ物言いで金髪少年の心を抉る。
「あいつの言う通りだよ。僕はモテに全てを捧げてた。スイーツのことなんて何にも知ろうとしなかった。あいつが大事にしてきたことを軽んじた。負けて当然さ……」
ううっ、堰を切ったように泣き出す金髪少年。美しい顔立ちも涙と鼻水で台無しだ。
「落ち込んでる暇があんなら練習すればいいだろーが」
噴水を挟んだ向こう側、呆れた顔でビターがやって来た。
その手にはフォンダンショコラの乗った皿が佇んでいる。
「どしたの、それ?」
「町の人たちが
「ほらよ」金髪少年に自作のフォンダンショコラの皿を渡す。
「正しいレシピで作れば腹も壊さねぇよ。お前形までは上手く出来てんだから」
皿を受け取り、フォンダンショコラを一口食べる。
「う、うまい……!」
「これ作れたら女の子にもキャーキャー言われるかもね」
なぜかメルトが自慢げに言う。
金髪少年はあっという間にフォンダンショコラを食べ終えると、ビターの手をガシッと強く掴む。
「ありがとうございますアニキ!! これから僕、アニキのような素晴らしいスイーツを作って女の子にモテモテになります! 」
「お、おう……アニキ?」
兄貴とは何なのか聞きたかったがどうやら無事にやる気を出したみたいなのでツッコまないようにする。
「男の友情ね」
メルトが二人を見て呟いた。
それから時が経ち、メルトとビターは再びノワールの町を訪ね、モテモテなパティシエになった金髪少年に歓迎されることになるのだが、それはまた別のお話。
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