立ち直りの孤独
梅生
.
それは呆気なくやってくる
腹立たしいほどさらっとした
つまらない装いで
惨めさの泥にまみれた私を、
白けた顔で見下ろしてくる
それは不意をつくのが好きらしい
めかしこんではいないが、
そこまで不潔でもなく
無味乾燥の、
ぼさっとした一人きりの瞬間を見定めて
いつの間にかすぐ近くに立っているのだ
あんなに待ち望んでいたはずなのに
どうにもこうにも納得いかず、
それからあと一日くらいは
未練がましく
煩わしさの泥を口にふくんでみるのだが
苦くもなく
当然美味くもなく
ただ虚しさだけがじゃりじゃりと
ベロの裏のひだに溜まっていくのだった
映画でも、ドラマでも、小説でも
立ち直りというのは往々にして
時間の中へ金色の線をひとすじ
恭しく力強く
端から端まで
うっとりするほどの精密さで
引いてくれるものだが、
私の場合は大抵、
濡れた安い絵筆の先で
おざなりに誤魔化してくるような
そんなふざけた怠慢さで
私の感受性の嵐を
無表情で汚してくるのだった
立ち直りの虚しさは、
もうこれ以上のものはないと思われた悲劇を
あっさり丸呑みにし、
私の俗っぽくだらしのない存在全体を
冷めた目で一瞥する
これならまだあの惨めさの中に埋もれていたほうが
よっぽど幸福だと思えるほどに
立ち直りの孤独 梅生 @stier7676
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