第7話 真意を探る目

 翔夢は家事の手伝いを終えると精神具現化現象に詳しいあの二人を呼んだ。


「あなたってよく精神具現化現象に巻き込まれるわね」

「私のはまた放ったらかし?」


 二人は来てそうそう不満を撒き散らしている。


「この人達は?」

 冬音は状況がまだ飲み込めていないのか、困惑した表情を浮かべていた。


「この二人は黒崎の頭の上にあるような、半透明な物体が現れる精神具現化現象っていうものを解決してくれる人達だ」

「はじめまして。私は白川真姫、三年生よ」

「はじめまして!加隈咲絆、同じく三年生です」


 二人が自己紹介をすると冬音もぺこぺことお辞儀をして自己紹介をした。


「それで黒崎さんの精神具現化現象が見えてないのはまた私だけ?」

「そうですね。俺と咲絆には見えてますよ」

「いっそ私にも精神具現化現象が起こらないかしら」


 また一人蚊帳の外の真姫は重いため息をついた。


「真姫先輩って厄介事なのに妙に親切に協力してくれますよね」

「私は作家よ?こんな面白いこと経験した方が得でしょ」

「少し優しいと思った俺がバカだった。今回の精神具現化現象、咲絆はどう思う――って咲絆は?」


 リビングを見渡すと先程まで隣に座っていた咲絆がいなくなっている。


「咲絆先輩なら隣の部屋で妹と遊んでいますよ」

 扉の向こうではしゃぐ紗楽と咲絆の声が聞こえた。


「何しに来たんだあいつ」

「気が合うのよ、精神年齢が同じくらいだから」


 翔夢と真姫は咲絆のことは置いて今回の精神具現化現象について話し合った。


「ゲームのHPゲージのようなものということは何かしらの条件でゲージが増減するはずよ。それが鍵になると思うわ」

「増えるのと減るの、どっちがやばいんですか?」

「それも確かめる必要があるわね。確信を得るまでゲージを空にも満タンにもしない方がいいかも」


 二人が冬音の頭の上をチラチラと見ながら議論をしていると冬音が恐る恐る尋ねて来た。


「この精神具現化現象?っていうもの、ちゃんと解決するんですか?」

「一人解決した例があるから大丈夫だ。咲絆のやつは後回しにしてるからいつまでも解決しないけど、黒崎のやつはすぐ解決させるから」


 それを聞いた冬音はほっと胸を撫で下ろした。


「あら、やけに黒崎さんに優しいじゃない」

「黒崎の弟の風邪が治るまで黒崎の手伝いをするって約束だしな」

「私もする!」


 話を聞いていたのか、突然扉を開けて咲絆が叫んだ。


「咲絆お姉ちゃんも家に来てほしい!」

「そんな……すごく困ってるわけでもないのに申し訳ないです」


 冬音は遠慮していたがもう紗楽と咲絆の間に話はついているようだ。


「精神具現化現象の解決に繋がるだろうし、黒崎もたまには休めるからいいんじゃないか?」

「咲絆先輩が大丈夫ならぜひお願いします」


 こうしてお手伝いが一人増えた。


「私は小説の締め切りが近いからごめんなさいね」

「お気持ちだけでも嬉しいです!ありがとうございます」


 話が纏まり、今日はお開きになった。



 三人はしばらく歩き、真姫だけ別方向なのでここで別れることになった。


「じゃあ私たちはこっちだから。おやすみ真姫」

「咲絆さんだけ、少し話があるのだけれどいいかしら?」

「じゃあ俺はゆっくり歩いてるから終わったら来いよ」


 翔夢はペースを遅くして先に行った。


「話ってどうしたの?」

「あなたの精神具現化現象のことだけど――本当は自分で解決方法に気づいているんじゃない?」


 暗がりの中、真姫の真意を探る目が咲絆の泳いでいる瞳を捉えた。

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