オートガイネフィリア

澄田聖

第1話 志喜屋の遍歴


 私は一体何なんだろう。この自問自答に応えられない日々が続いていた。

まるで自分の命題のようにも感じる。思えば、私は幼少期からそんなことを考えていた。

 私は幼少期に自分の性とは異なる性に憧れを感じていたのだ。自分の男性器が女性器に変わるという妄想をしていると自分の体が幸福に包まれる気持ちになった。無論、布団の中だったので、外的要因もあるかもしれない。そうしているうちに自分の男性器を触っていると変な気分になることも幼少期の時点で理解していた。これが人間を生み出す練習だとは知らずに・・

 真夏の7月、幼稚園では私はプールの遊戯をしていた。今思えば、あれが女と男の違いを実感させられた出来事だといっても過言ではない。女児はハイレグ、男児は海パン・・!

女児の体は未発達であり、男児とは性器以外の見た目は変わらないのに、こんなにも違うなんて・・・。私の夢に水着という壁が立ちはだかった瞬間だった。

 しかし、その壁は男児の私を幸福にもしたのだ。本当に皮肉な気持ちになる。私の家は団地の一角だった。家賃2万という破格の値段である。その値段だと読者は地方だと感じるだろうか、まさしくその通り!マンションの東側は山々に囲まれ、自然豊かな場所だった。この値段のためかベランダはせまく、大人2人が入るのがやっとである。私はそのベランダで水遊びをした。私の母は水遊びの際に着させたのがハイレグであった。私はこの時四歳であったが、性別の壁を乗り越えられたのだ。私の悩みは早くも解消され、私は希望に満ち溢れた。

 小学校に入学すると、私の幸福は破壊された。ランドセルである。女児は赤、男児は黒。現在では様々な色が存在しているが、私の小学生時代は基本的に赤と黒。当然私は黒のランドセルであった。これを買う際に私に決定権は存在しなかった。両親と一緒にショッピングモールに出かけた時に私は「黒じゃなきゃだめなの?」と尋ねると、「当然だ。男らしくていいだろう。」、「赤のランドセルで学校なんて行ったら、笑いものよ!」と父母からも当たり前のように拒否された。今の私ならば反論をしただろうが、幼稚園児の私は従順だった。

 女性への憧れは前からあったが、女の子の遊びが好きだったわけではない。人形遊びやおままごとの類に私はあまり関心を持てなかった。というより、楽しそうと思ったことがなかったのだ。

 私はサッカーをすることが多かった。しかし、何かサッカーに強い思いをもっていたわけではないが、友達の指田敬が誘ってくれたのでしていた。指田は1年生のころから持ち前の明るさと正義感の強い、学級委員的な性格をしていた。私は引っ込み事案であり、自分から人に話しかけることができず、入学早々から学校に嫌気がしていた。

「守君!よろしく!!」

苗字が指田(さしだ)なので彼は私の前の席に座っていた。いきなり、声を掛けられることに私は慣れていない。

「よ、よろしく・・・」

「俺は指田敬!! 友達からは敬ちゃんってよばれてんだ!!」

彼はクラス全体に響くような声で言い放った。私は注目されることが嫌いだったので、私は無言になってしまった。でも、まさか彼が私の親友になるとは思いもしなかったが、、



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