時折、お嬢様
ゆりえる
第1話 何より憂うつな日曜日
日曜日は嫌いだ!
週に1度の何よりも苦痛な時間がやって来るから。
「薫、早く起きなさい!」
まだ7時......
日曜日なのに、不本意にも7時に起こされる。
日曜日の朝は毎回、こうして早起きを強要される。
卵かけご飯を流動食のように食べた後、丁寧に顔を洗い、化粧水と乳液で肌のきめを整える。
自分は化粧がキライ。
肌がべたついて、気持ち悪い。
それだけでも苦痛なのに更に、母親から、ベタベタパタパタされて、念入りに仕上げに入る。
およそ1時間かけるが、厚化粧というわけではなく、仕上がりは、ナチュラルな美少女風に見え、鏡の中の自分の変化に毎度驚かされる。
母は母自身を生かせるメイクをしてないような感じだけど、化粧にかけている時間の違いも有るのかな。
自分は、母のメイクの10倍くらい時間がかかっているのだから。
鏡の中の我が子の見惚れそうなほどの変わり映えに、満足げに微笑む母。
「今日も、お肌もキレイでパーフェクトな仕上がりね!」
別に自惚れるわけじゃないけど、母が言うのも納得出来る。
この姿の時には、すれ違う男達の殆どを釘付けにしているのが分かるから。
化粧をすると、自分は、こんなにも魅力的になれるのだと、イヤでも思い込まされる。
視線を集めるのは、美少女メイク以外にも、身に付けている衣服のせいもある。
日曜日には、毎回ドレスアップして出かけるから。
そのドレスを着るのも、また苦痛!
足にピッタリ貼り付くような感触のストッキングに、窮屈なブラジャー、ウエストを細く見せる為のコルセット。
先刻、勢いよく流し込んだ卵かけご飯が逆流しそう。
そして、仕上げは、頭が蒸れそうなヅラ。
しかも、ドレスを着た時の歩き方や、座った時の足の形とか、普段気を付けなくてもいいところまで、神経を使わなくてはならない。
皆が楽しいはずの日曜日に早起きさせられ、こんな調子で、毎回、祖母宅を訪れる。
我が家も、わりと広めの家だけど、祖母宅は格が違う。
高級住宅街に位置していて、広い敷地内から、お屋敷に着くまで、歩いて10分はかかる。
召使いを除き、たった1人で住んでいる祖母は、他人になかなか心を許さない気難しい気性の持ち主。
気難しいだけなら、その年代の人に多いそうだから、我慢できる。
何より困るのは、祖母が極度の男嫌いという事!
そのせいで、俺が毎週、こんな姿にならなきゃならない!
それだけじゃない!
俺と母親は、父親とも別居させられている。
させられているていうか、正確には、別居していた方が、お金周りに都合が良い事に気付いた母親によって、祖母が健在な間は別居生活を続けている。
女の子を熱望していたけど俺が生まれて、取り敢えず、男でも女でも使われる「
祖母は、今のところ、俺が男って事に気付かないようで、女の子と信じ可愛がってくれてる。
毎週日曜日、遊びに行く度に、お小遣いと将来の為の積立金として、50万円という大金を手渡される。
毎回50万円、1年で約3000万円!
それが無かったら、俺がわざわざ、コスプレのような恥ずい格好して、祖母宅を訪ねたりしない!
「今日も、上手くやるのよ!」
母は、祖母を騙している事に全く罪意識を感じてない。
そもそも、祖母は母の実母ではなく育ての親だ。
幼年期に両親を事故で亡くした母にとって叔母にあたる人で、俺にとって実は義祖母で、母には重要なところだが、俺の方は、そこはあまり問題視しない。
当時から、男嫌いの祖母は、独身実業家で忙しかったが、他に身寄りの無かった母を引き取り、妹の忘れ形見として大切に育てた。
が、そんな男嫌いの祖母を裏切るような形で結婚した母には、当然の如く祖母宅の出入りを禁じた。
それほど徹底した男嫌いだから、父と別居した途端、また母をもてなし、生活費として多額のお金を渡した。
それは、俺が生まれた後も続き、手渡されるお金は増額した。
母は、それに味を占め、働かなくても手に入る大金の為、この俺を犠牲にし続けた。
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