つまりは
バブみ道日丿宮組
お題:ゆるふわな善 制限時間:15分
つまりは
一日一善をしなさい。
少女は毎日のように小さなとても見えない気遣いをし続けた。
誰かが忘れた落とし物を交番や、落とし物入れにいれたり、消し忘れの黒板を消してあげたり、怪我した友だちのカバンをもってあげたり、お金をかしてあげたりと見えない部分も善意を尽くした。
結果として残ったのは、刑務所行きという残酷な結果だった。
「……おばあちゃん」
「あんたがそんなことをするなんて思っちゃいないけどね、世間様にはそう見えるんだ」
ガラスの向こうにいる祖母は真面目な顔をして、
「でも、それは他の人にはできなかった大事なことさ、あたしは悪いって言わない」
優しく笑った。
「あんたがそこから出てくる頃にはもうおばあちゃんはいなくなちゃってるかもしれけーー」
「嫌だよ、そんなの絶対イヤだ! もう家族はおばあちゃんしかいないの!」
いかないでよと少女はうつむく。
その様子を看守が睨みつける。
おばあちゃんはその看守が癇に障ったが無視して、
「大丈夫、あんたのおとさん、おかさんは莫大な財産を残してくれたんだ。ほんとだったら、あたしがなんとか親戚を黙らせればよかったんだけど……」
笑い顔が暗い笑みに変化すると、
「……私がしたことっていけないことだったのかな」
「どうかね。善意なんてそいつがどう思うことかだよ。あの家族はあんたを恨むかもしれないけどーー」
少女に殺してほしいと病室で願った遠い親戚は恨まない。
結果的に少女が親戚たちに罵倒され、世間から誤解の目を受けようと知ってるひとは知ってる。それでいいとおばあちゃんはさらに言葉を続けた。
「あいつは笑って逝ったんだろう? ならあたしはいいさ。昔からの縁でね、どっちが死にそうになったらトドメをさして欲しいって子供の頃に約束したんだ」
それをあんたにやらせることになるとは思いもしやしなかったけど、
「あいつも馬鹿だね。どうしてあたしに言わないんだよ。ほんとに馬鹿だよ。まだ小さい子どもに罪を作って自分はいきやがって」
おばあちゃんは泣いてた。
それは少女が行ったことでなのか、死んだ親戚のことでなのかは少女にはわからなかった。
面会時間の終わりの時、
「あんたが出るとき、いい家にしておくから」
あとちゃんと面会も毎週くるから。
それっきりおばあちゃんは姿を見せなかった。
看守に聞いたところ、行方不明となった。現在捜索中とのことだった。
それから、少女は機械のように少年院を過ごし、外の世界に出た。
「お、ばあちゃん……?」
そこには見間違えるはずのない人影がこちらを見つめて待ってた。
「ふふ、驚いたかい。実は今までのことは変装だったんだって言ったら信じるかい?」
少女は首を大きく振って、何年ぶりかの涙と笑みを浮かべ抱きついた。
「死んじゃうってきいて、行方不明って聞いて寂しかった。ずっとずっと一緒がいい!」
「あぁ、そのためにこうしてやってきたんだ」
さぁいこうと、おばあちゃんは手を引き、綺麗な橋を二人は渡った。
つまりは バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます