春を告げるこ

バブみ道日丿宮組

お題:秋の土 制限時間:15分

春を告げるこ

 外に出るのはまだはやいと兄に言われた。でようとしてもまず鍵がかかってるから無理だよっていうんだけど、外に出るための天井ドアの近くには寄せてくれない。

 近くに行くと危ないとか、お前にはまだはやいとかいって邪魔してくる。

 私だって外で遊びたいのに、どうして他のこみたいに地上で暮らせないんだろう。不公平だ、不公平だって駄々をこねてるうちに眠ってしまってた。

 そんな私を起こしてくれた兄の手には土があった。

「わぁ、きれいな花」

「まだ小さな芽だけど、これからの人類には必要なエネルギーだよ」

 そういって兄は植木鉢において、陽の光があびる地下農園の端においた。

 たぶん兄は外に出れない私に変わって、外のものを持ってきてくれたんだ。そう思えると嬉しくなって、それからきちんと地下農園の手伝いをするようにした。

 そしたらみんな謙遜した顔で、◯◯様はそんなことをしなくてよろしいからってよそよそしいんだ。今までサボってたからって遠慮しなくてもいいのに。

 でも、私が手伝うスピードと他のみんなのスピードは違う。外から戻ってくる子どもも私よりどこか成長速度が早い気がする。

 なんでだろう。私だけが孤立させられてる……そんな気を感じて数日監視をはじめた。

 毎日誰が何をして、何をもってくるのか。

 今まで考えもしなかったけれど、私の家にはお父さんもお母さんもいない。いるのは兄っていう人だけが私の側にいてくれて世話をしてくれる。

 兄はたまに外にいくからその時は代わりに私より小さな巫女装束の女の子が構ってくれる。なぜか敬語で話されるからこちらとしては遊びにくい。

 というか遊びもなんかぎこちなくて楽しめない。

 唯一お絵かきくらいか。

 お絵かきをすると、そのこは静かにその様子をみて何かを感じてるように目に集中。そして紙に何かをかいていくんだ。

 その紙に何書いたかは絶対に見せてもらえない。ちらっと見えたのは、『お告げ』という3文字ぐらいで他はさらさらとした字で読み取れなかった。

 もうすぐ冬がくるからと、外からみんな荷物をたくさん地下へと持ってくる。地上へと住めばいいのにというと、まだその判決がきてないからダメなんだよと頭と猫のような耳を撫でられる。

 そういえば、私以外の人には猫のような耳がない。

 自分で引っ張ってみても痛いだけで、何かで接着されたわけじゃないみたいだし、しっぽも実はある。伸縮自在! というのはいいすぎだけど、もふもふどをあげることに最近挑戦できた。

 巫女装束の女の子もそのしっぽだけは触るのが嬉しいらしく、撫でてくれたり毛を揃えたりしてくれる。

 そういう関わりあいを毎日続いて冬が訪れた。

 私は眠ちゃったからよくわからなかったけど、起きたら春がきてた。

 みんな少し老けたかなって思って、似顔絵代わりにお絵かきをしたら、

 みんな嬉しそうに

「や

 っ

 と

 お

 わ

 っ

 た

  」

 と次々と倒れていった。

 残ったのは、兄と巫女装束の女の子たちだけだった。

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春を告げるこ バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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