巨大蟻
バブみ道日丿宮組
お題:汚い蟻 制限時間:15分
巨大蟻
蟻が群がる理由は餌を求めたり、巣を作るためである。
鉄壁と呼ばれる鉄蟻の巣が硬いのは、溶接蟻と、運搬蟻の強さといえよう。
「……我々にもあの技術があれば戦えると思えるのだがどう思う?」
視察長が唸る。
「巨大化できれば作業効率はあがるかもしれませんが、人間は蟻よりも大分ミニマムです。昔であれば立場は逆でしたが」
現在地上を支配してるのは巨大な蟻たち。
最初は汚い不格好な見慣れない蟻がいろんな国で発見されたのが始まり。
足が2つしかなかったり、妙に口が大きかったりと、奇形が多かった。研究者たちは捕まえて原因を特定しようとしたが、環境の変化がそうさせたとしか発表できなかった。
そして訪れたXデイーー火山爆発と思われる音とともに国の至る場所に大きな穴があいた。
被害はかなり広く、死者も多かった。
救助、調査と人が多く動いたが、なぜか救助する人のが多くなった。調査班は次々と負傷し、穴に入るのを止めた。
最終的に穴に入ってたのは、小型の偵察ヘリーーいわゆるドローンたちだった。
そのドローンが映し出したのは、逃げ遅れた人を貪り喰う蟻たちの姿。
それは奇形と言われてた蟻の全てが一致して大きくなったもの。
政府はその情報を元に地下への道を全て塞いだ。地下鉄はなくなり、穴も鉄コンクリートで埋めた。
そうして数年は平和を保つことも、蟻の恐怖も忘れることもできてた。
人間は嫌なことをすぐに忘れるが、蟻はそんな考えを持たない。
侵入できないなら侵入できるように進化する。
そうーーいずれ鉄蟻と呼ばれる鉄を溶かす蟻が出現することになり、人々は恐怖を思い出す。そこから戦争ははじまった。
蟻の殲滅ーーたかが蟻を殺すのに大量殺戮兵器は必要ないとここでも世界は彼らを馬鹿にした。そして兵器はその甲殻によって無効化され、ほぼ兵士は全滅した。
唯一生還できてたのは、空を飛ぶものたちだった。
が、むろん忘れていけないのは、蟻も空を飛ぶという事実だった。空と地下、そこはもう蟻のテリトリーへと変わった。
「蟻の目的はなんでしょうか?」
「本能的にいえば、子孫繁栄だろう。人間と同じな」
にやつく視察長は苦しそうに胸を抑えてた。
「お前もそろそろいけ、死ぬところを見たくはない」
「わかりました。この資料は絶対に無駄にはしません」
敬礼と共に、青年が視察長の元より去った。
残ったのは、胸に穴があいた1人の人間。
「いつだって、自然は脅威を向けてくるんだ。それを忘れた人間が悪いのかもなーー」
巨大蟻 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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