とある銀行

バブみ道日丿宮組

お題:暗い銀行 制限時間:15分

とある銀行

 いくらでも好きにしてもらっていいからと部長に渡されたキャッシュカードは聞いたこともない会社名だった。そしてその場所も限定。怪しさしかない。

 もっとも一番怪しいのは部長の存在だ。

 仕事をしてるようで、してないのに皆が皆定時で仕事を終えてる。他の企業の共同プロジェクトも兼用してるというのに順調という話しかきかない。

 どうしてそんなにうまくいくんだろうと、僕は当然のごとく周りも不思議に思った。

 で、この間あった飲み会の席でうまく先輩と二人きりになれたので、勇気を出して聞いてみたところ、とある銀行からお金を借りれば運気があがるーーそのせいで会社がうまく回ってるんだよと教えてくれた。

 そのまま部長は僕を連れてホテルに連れ込まれ、散々な目に合わされた。あぁいう経験ははじめてというわけじゃないけれど、ちょっとドキドキ感は今も忘れられない。

「えっと……こっちかな」

 スマホの地図をみても反応はない。もちろんビルの形ぐらいはあるが銀行のマークなんて1つすらありゃしない。

 裏路地の見てくれはいわゆるホラーゲームのあのネズミが走ったり、ゾンビがでてくるような雰囲気を醸し出してる。

 部長が連れてったあのホテルのピンクライトが懐かしく、愛しくなるぐらいの寂しさだ。

 頬をぽんぽんと叩くと、前へ向いた。

 今日は運気があがるといわれる銀行へやってきたのだ。部長との縁を深くするための算段を考えるために会社を休んだわけじゃない。

 いや……正確にはアレがこなくなったから、それも調べるためということもあるが……何にしてもお金と運気はこの先絶対必要になる。

 僕と部長が結ばれるかはわからないけど、子どもには元気に育って欲しい。

「はぁ……」

 それもきのせいかもしれないけどーーと、細めをしてたら看板が見えた。

 何語だろうか……銀行という文字は読み止めるのだが、先頭の文字がみえない。というかセキュリティ的に銀行なのかと思うくらいのふるさだ。

 駄菓子屋……だな。昔のそんな雰囲気をもってる。

「……っ」

 ごくりと生唾を飲み込んで、扉をあけてみる。


 すると


「いらっしゃいませ」

 そこはごく普通の銀行と変わらなかった。

「本日はどのようなご利用でしょうか」

「え、えっと、その知り合いの紹介できたんですが……口座を」

 笑顔が眩しくて僕よりもふくよかできれいな店員さんが手を窓口へとのばす。

「あちらへどうぞ」

 言葉のままに進んでく。注意しながら周りを見渡すと、お客は結構いた。青年から、老人までかなり幅広い人物が店員にも混ざってる。

 普通の銀行なのかと安心してた僕は、契約内容を見てびっくりした。

「幸せになれないとお金を入れられないし、出すこともできないですか?」

「はい、このご時世暗い雰囲気を持ってますとそれだけで全てがひっくり返ってしまいます」

 ですから、

「契約者様は幸せという行為を常になさって下さい」

 不可解なルールだ。

「……逆に不幸せに感じたら?」

「何度かのペナルティの後、こちらへはこられなくなります」


 怪しげな言葉はその後も続いたが結局僕は契約をすることにした。

 銀行を出て後ろを振り返ると、もうそこには銀行はなかた。

『あなたが利用したい時に、また会えることでしょう』

 そう窓口の人は言ってた。


 それが僕が遭遇した銀行だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

とある銀行 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る