鬼の村
バブみ道日丿宮組
お題:今年の酒 制限時間:15分
鬼の村
今年の酒はあまりできがよくなかった。数としては半分というくらいだ。
これじゃ……子どもに飲ませても変異は起こらないだろう。
半分の血が入ったものであれば、治療薬程度にはなるとは医師はいってたが、酒を飲んで変異を起こせない子どもはこの先生き残れない。ただの化物として変化し、人間に殺されるのがオチだ。
子どもが大人になるための狂い酒。契約のようなものだ。
酒を飲ませ、身体をかつて鬼と交わった血を認識、固定させる。概念としてはそんなものだが理屈は文献を読んでもよくわからない。そうなるようになってるというぐらいだ。
子どもの狂わせ方は、最初弱く、そして効果を強く鬼をなじませる。
最後には酒を飲まずして自分で鬼になれるようにする。
それがこの村での掟。産まれたきた時点でそうなることは決定づけられてる。例外はない。
なぜならば、何もせず大人になればただの鬼ーー化物として世を脅かす存在となるからな。何人かがその犠牲として亡くなってるニュースは村であっても入ってくる。
職人としては嫌な話だ。
だからこそ、失敗した酒があるとよろしい状態とはいえない。
「……お父さん、ダメだったの?」
「お前もかなり飲んだからわかるだろ……」
娘は静かに頷いた。酒蔵がいくつかあけられ、飲まれた後がある。微妙に鬼化してるがそれは成功作を飲んだからで、全部そうであるわけじゃない。
この村で次の当主となる偉大な鬼の血。まさに1000年に一度あるかわからないくらいの血の濃さを持つ子だ。ちょっとでおかしくなる素質でもないし、中途半端な変化をすることも少ないはず。
だから、この子が反応しないとなると、酒の効果はないといっていい。
「他の連中がうまくいってるといいんだがね」
「お父さんだけじゃないからきっとだいじょうぶ。職人になれるのもそう!」
酒は鬼の血を入れ熟成させる。
毒には毒を。
その毒の鬼の血を持つものだけが職人になれる。
親は子どもを作る。そしてそれを自ら殺すようなことをする。
なぜこの歴史ができたのかは、かつての政府が問題であった。
貧困の村を救うための力。
それが鬼の力だったという。
「来年に期待しよう」
うんと頷く娘の頭には日本の角が綺麗に伸びていた。
鬼の村 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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