妹の赤ん坊と、姉

バブみ道日丿宮組

お題:鈍いパソコン 制限時間:15分

妹の赤ん坊と、姉

「やぁ姉さん今日も僕をいじりにきたのかい?」

 居間のカーペットで赤ん坊を抱いてると、夫が姉を招き入れた。

「いじるって酷いな。実の姉に向かってそういうことをいうのはダメじゃないか?」

 そうこう言うときはと、姉さんはなぜか居間の扉に片手を付き、

「やぁボブ!! 遊びに来た……っておいおい、お皿洗いに手間取ってるようだね?そんな時には……これさっ!!」

 アメリカンチックな言葉をかけてきた。

「さすがに僕も皿洗いはできるよ。鈍いパソコンじゃないんだから、ゆっくりでも赤ん坊を抱いてもできる」

「身長差と体重差に違いがないのによくいうよ」

 ほれと、堂々と居間に侵入してきた姉に持ち上げられてしまうのは僕だ。抵抗もなく、防ぎようもなく、赤ん坊と一緒に宙に浮いた。

「君も何かいったらどうかね。仮にも夫という立場があるだろ!」

「うーん、実際育児に心配なのは本当のことだからね。こうしてたまにきてもらってるわけだよ」

 若干目を逸らすのは付き合ってる時からバレてる行為だぞ、君。本当はそんな理由で連れてきてるわけじゃないって言いたいんだろう。

 わかってる。姉さんは言い始めたら、頑固として断らないからね。いわゆるウィルス感染したパソコンが徐々に鈍くなってく感覚だ。

 そのおかげもあって、母も父も赤ん坊を産むことを許してくれたのではあるから感謝すべきところではある。

 が、育児は母親の役目で姉さんの仕事ではない。

「仕事はどうしたんだい? 前昇格して忙しくなったとか言ってなかった?」

「うーん、膨大な仕事量が増えたんだけど、その分部下もいっぱい引き抜いてやったからさ、あたしの部所は、天の川増水とか関係ねぇくらいに優秀だよ」

 やられた方はいい迷惑だろうね。

「ほら、姉さん。おろしてくれ、そろそろこちらも痛いし、赤ん坊にも悪影響がでる」

「残念」

 ゆっくりとカーペットに降ろされる様子は、小動物かなにかを相手にしてるような気がして少し癇に障る。もっとも僕が小さいのは昔からで、こうやっていじられるのも昔からだ。

 それが結婚して、赤ちゃんを生んでからも変わらない。

「はぁ……もうちょっとぷにぷにしたかったな」

 そういいつつ赤ん坊のほっぺたを触っては言葉と行動が噛み合ってないではないか。

「ため息はこっちがつくんだぞ? だいたい今日はどの要件で彼を誑かしたんだ」

 夫はいつの間にかいなくなってた。

 買い物を頼んでおいたから、台所で整理してくれてるのだろう。というか、逃げたというべきか。

「実はさ、母と父が会いたいって実家でぼやいてさ」

「またかい? なんで姉さんたちはこぞって何回も僕と赤ん坊に会いたがるんだ!」

 赤ん坊の精神状態にも関わるし、僕の苛つき度が何よりも増すじゃないか!

「えっと、それはねーー」


 後半に、続く──。

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妹の赤ん坊と、姉 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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