私刑と極刑
バブみ道日丿宮組
お題:見憶えのある極刑 制限時間:15分
私刑と極刑
私刑を見るのはこれで何度目だろうか。
『悪を滅ぼすために悪になる』
最後に見たお姉さまはそう言ってた。
弱い私を守る勇者がお姉さまだった。
いじめられっこを殴り返したり、勉強を教えてくれたり、優しい姉さまだった。
私が誘拐犯なんかに捕まりさえしなければこんなことにはならなかった。少なくとも私刑なんてものが極刑に変わることはなかった。
「……あぁ」
姉さまは実現できる力がある。それがお姉さまの事故で不幸。私という妹がいたからこそ壊れてしまった。
優しさを壊してしまった。
「……また」
新しい街にたどり着き見えた大通りに並んでるのは、串刺し死体。
その光景はかつてのヴラド・ツェペシュならぬヴラド・ドラキュラが作ったという兵士の死体のよう。いうならば、血溜まり通りとでも呼ぼうか。
頭だけになった店主と、陳列された身体。買い物客らしき人物は槍によって、見物客までもが演出として配置されてる。
「……まだ終われないのか」
虚しさしか私の中には残らない。
たった1人の妹にされたことが許せないからと政府と国、そして助けてくれなかった群衆すべてを極刑とする。
それがお姉さまの私刑。
私はその後をお腹の痛みを抑えながら追うばかり。殴られた痛み、蹴られた痛み、色んな拷問の痛みよりも今はお腹のが痛い。
きっと赤ん坊が産まれる。
父親がわからない誰かの子ども。
「っ……まだ、まだだから」
医者も何もかもが残ってないこの状況じゃ、満足に産むことも中絶することさえできない。
どこか手が及んでいない街があるんじゃないかって思うけれど、街という街は見覚えのある場所にしかなってない。
休憩のために立ち寄った民家の中は比較的他の場所よりマシだった。食料も、水分も残ってる。暖を取ることもできた。
「……」
居間に転がる何かをみないようにしテレビのスイッチをつけると、ニュースでは絶対近づいてはいけない地域にこの関東地区が指定されてた。
つまり、私がいるこの中心部から人がいるところまではかなり遠く歩かなければならない。
いつ私は追いつけるんだろうか。
赤ん坊を抱えながらでも、私は姉さまを止めなきゃいけない。
だって私も悪だから。
私刑と極刑 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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