ショートショートお茶漬け

16話 御茶ノ漬駅へようこそ

「御茶ノ漬駅~。御茶ノ漬駅~」


 響くアナウンス。


 気付けば僕は、その不思議な駅で降車していた。おかしいなぁ……御茶ノ水駅を目指していたのに。


「君、御茶ノ漬駅は初めてかな?」


 動揺していると、駅員らしき男に話しかけられた。


「はい。気付いたらここに……」

「では、私が案内しよう。ここの駅前は、珍しいものばかりだよ」


 そう言うと、彼はスタスタ歩いて行ってしまった。他に行く当てもないので、彼を追いかけて駅の外へと踏み出す。


 駅前には、ありとあらゆるお茶漬け用品店が並んでいた。海苔、鮭、梅……等々のお茶漬け専門店に、珍しいところでは、鯛のダシ茶漬け専門店も。お茶漬け用に品種改良された米や茶葉を扱うお店もあるほどだ。


 お茶漬け好きの僕には堪らない……いかん、ヨダレが。


「やはり、君も同志のようだね」


 一通り案内を終えて、彼は頷く。


「ぜひ、お茶漬けのテーマパークを楽しんでいってくれ」

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