5話 鯉のぼり進化論

 滝を登り切った鯉は竜になり、しばらく宙を浮遊した竜は鯉のぼりへと変化する。

 

 そして、五月に生まれた鯉のぼりは、六月の上旬頃までにその命を終える――これが、今まで周知されていた鯉のぼりの発生と成長だった。


 しかし近年、鯉のぼりの研究が進み、新たな生態が発見された。運良く七月まで生き残った鯉のぼりは、天の川を泳いで登り、宇宙へと繰り出すそうだ。


 新たなる『鯉のぼり進化論』の提唱である。


 これに目を付けたのが、誰あろう織姫と彦星だ。彦星が天の川で鯉のぼりを養殖し、織姫が機織りの技術で加工を施す。そして、出来上がった製品を地球へと輸出する。地球と銀河をまたに掛けた、一大新事業が誕生した瞬間だった。


 そんなわけで、『天の川印の銀河鯉のぼり』が今年の七月から発売される――星々の輝く装飾があしらわれた、美しい鯉のぼり。


 ……欲しい。


 鯉のぼりコレクターの僕としては、見逃せない逸品である。

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