星になった両親と僕
かめ
両親が星になった日
昨日両親が星になった。
比喩とかでなく、文字通りに紛れもなく夜空に浮かぶ星になったのだった。
昨日は僕の18歳の誕生日だった。18歳にもなると家族に誕生日をお祝いしてもらうのが少し気恥ずかしいけど、お金のない学生にとって純粋にプレゼントを貰えることが楽しみだった。今年はクロスバイクが欲しいとお願いしていた。今乗っているママチャリなんかじゃなくて、もっとカッコいいやつ。そんな僕のお願いはすんなり通り、当日希望通りのプレゼントが貰え、貰ったそばからすぐにでも走り出しそうになるほど嬉しかった。
しかし、そんなプレゼントと共に明日から私達は星になるからあとはよろしく、そんな報告をプレゼントのついでみたいに軽く言い渡されたのだった。
どうやら二人で星になることは二人の結婚前からの夢で、一人息子である僕が18歳になったら実行するつもりで前々から準備してきたらしい。手続きにお金がかかったようであんまり財産は残せないらしいけど、もう18歳なら大丈夫でしょ、そんな感じで二人は笑っていた。何があっても二人で空から見守っているよ、だから大丈夫、僕の方を見ることなく、互いに見つめ合いながらそんなことも言うのだった。
僕の理解が追い付く前に、あとはよろしく、そう言い残し二人は手を繋ぎながら外に出ていき、突然光出すと数秒後には目の前から消えてしまった。呆然と夜空を見上げるとそこには大きな満月と無数の星があり、今さらどれが両親かなんてわからなかった。
自転車で走り出すことも忘れ部屋に戻りベッドに寝そべる。どうしても星となるための料金が気になりスマホで調べると、様々なサイトが出て来てきたが一人で500万、夫婦だと二人で900万円程度が相場のようだった。
「余生は夫婦二人で素敵なスターライフを!」
そんな謳い文句と共に割引をアピールしていた。
900万円。プレゼントの自転車は5万円。本当は10万円の自転車が欲しかった。けれども高校生へのプレゼントで10万円は高すぎると言われて渋々5万円の物を選んだ。それでも十分嬉しかったはずなのに、今はもう喜べない。彼らの夢に比べたら、僕に10万円も払うほどの価値はなかったのだろう。そんなことを暗に言われている気がしたのだった。
なぜ彼らは星になりたかったのだろうか。もう彼らにとっては余生だったのだろうか。そんなことを考え出すと眠れもしない。僕では彼らの生きる理由にはなれなかったのだろうか。なぜか情けないような恥ずかしいような、何とも言えない感情が頭から離れない。カチカチ、時計の針が動く音だけが部屋中に響く。その音を聞きながら、彼らが星になった理由を、もう答え合わせをすることも出来ないのに延々と考えてしまうのだった。
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