ひらひら昼

 散歩だから、目的地は無い。どこに行きたいのか分からない。適当に、ぶらぶらと歩き、長い時間、景色をよく見る。


 ここのコンビニはいつからあったのか、そして、あの公園はどこに行ったのか。もしかしたら、撤去されたのかな。ただでさえ、最近、もの覚えが悪くなってるのに、困るなぁ。思い出がまた一つ、いつか消えるね。


 田舎のあぜ道を歩いて、田んぼの間を通ると、ウシガエルの自慢話がよく聞こえる。

 「ここは俺の家だぜーっ!イェー!」

こんな感じかな。アマガエル君達を追いやって我が物顔だ。まぁ、招いたのは私達なんだけど。


 内向的でネガティブな私は、田舎の町にとても感謝している。人通りが少なく、自然がずっと、目を、身体を癒やしてくれる。友達も少しはいるけれど、休日に一緒に遊ぼうと、誘える仲ではない。本当は、断られるのが怖いだけ。

 通り過ぎる人に勇気を出して、挨拶すれば、見事に無視をされる。下手をすれば、不審者に認定だ。もし私が整った顔立ちをしていれば変わっていただろう。いや、内向的でネガティブな奴に挨拶されれば、相手にしないのが、吉だ。とても納得してしまう。


 挨拶に勇気を使ったので、私は休まなければいけない。そして、勇気を再装填するため、こう考える。今はもう、そういう時代なんだと。人と人の繋がりが、よくある歌のように見えない物になった。隣人もよく解らないし、解ろうともしない。だって、怖いから。もともと、解らないものや、見えないものに恐怖を覚えていたのに、なんで自分達から毎日、辛くて恐怖を感じる事を選んだんだろう。うーむ。おっと、ここで勇気が再装填された。考える事をやめよう、悲しくなってしまうから。


 水を飲む。少し、息を止める。


 あっ、そうだ。神様も天界を散歩したらいいと思う。だって、いつだって下からなんか聞こえるんだから。うるさい、なんかがさ。


 矛盾をどちらとも装備している私は、身体が重い。外したいのは山々だけど、外れない。呪われた装備だな。有名なRPGゲームの効果音が流れる。

 でれでれでれ でん   でん。

やかましわ。このっ。だけども、冷静なれば、私は勇者って事になる。こんな勇者は嫌だNo.1を3年連続で取りそうだ。


 昼食はいらない。こんな食習慣で生きてるから、身体も適応した。新人類かも。


 小さい頃から不思議に思っていた。食べる事が好きって言う人がいることに。凄く尊敬できる。私は、食べる事が苦手で、少食だし、箸を動かすのも遅いし、好き嫌いが激しい。小学校の頃には、昼休みを潰してまで、わがままを貫いた。食事には、良い思い出が無い。だから、羨ましい。とっても。

 家族と食事をして笑ってはいたが、それはテレビを見ていたから。マナーが悪いけれど、もうどうでもいいでしょう。


 家へ帰ろう。結構歩いた。5kgぐらい痩せたかな。おっと、つまらない冗談をすみません。今更ですが。徒歩でとことこさっさと帰っとこ〜。


 愛しのマイホームの中へ入ったならば、疲れた足に鞭打ち、散歩用の少ない荷物を放り投げ、部屋着へと変身。このまま、マイルームのマイベッドで、寝よう。夜まで。


 「ただいま。」


なんも聞こえないよ。

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