「ねえ」


「うん?」


「何回目で思い出した?」


「7」


「そうなんだ」


「というか、7以降は回数を数えてない」


「でも、思い出したんだ」


「7か、それ以降の、どこかで。よく分かんない」


「思い出してくれたなら、いいよ。許す」


「何かお気をわるくされるようなこと言いました?」


「いえ、べつに」


「しかたないだろ、正義の味方なんだから」


「また、正義の味方」


「だって事実だし」


「なんでもいい。なんでもいいから」


 どこにも行かないで。ずっとここにいて。


「無理だろ。車中泊しろってか?」


「それでもいい。わたしの部屋でも」


「正義の味方はやることが色々あるんだよ」


「でも」


「わかった。わかったよ。よくわかった。じゃあ、とりあえず。部屋まで行くか。シャワーと風呂だ」


「うん」


「いや待て。俺が運転する。俺の部屋に行こう」


「ほんと?」


「嬉しそうだな」


「うれしいよ。あなたのことを、知れるから」


つつみ長近ながちか。任務の関係上別な場所を行ったり来たりするので年齢は不明。好きなものは交差点のとこのコンビニのお菓子。あとは」


「あとは?」


 人から認識されにくい体質を持っていて、自分のことをいると思ってくれるひとが、少ない。


「おまえがいれば、それでいい」


「なにそれ」


「それでいいんだ。おまえの相手に、俺が認識されないかもしれない。それだけは言っとく」


「いいよ。断る」


「断るなよ」


「わたしはあなたがいれば」


「だめだな。そこだけは、引けない。正義の味方は、いつ死ぬかわかんねえし。今日みたいなことも、またあるだろうし。戻ってこれるとは、限らない」


「だから、別なひととも仲良くなって、ってこと?」


「そう。それができなければ、この話はなしだ」


「そっか」


「着いたぞ。どうするかは、おまえ次第だ」


「あなたは。わたしにどうして欲しい?」


「一緒にいてほしい」


「わかった。じゃあね」

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