第3話 出会い
扉を開けたら二人の高校生が言い争っていた、なんて親の自慢にすらならない事実は捨てておくとして…もしあれが部活動の活動の一種であれば一生懸命励む生徒の姿はチリと化す。あまりにガッカリだ。もうウチに帰ろう。
歩いてきた方角を向きそう心に固く誓った瞬間、後ろからものすごい風圧が襲いかかった。
「わ、」
思わず尻餅をついてしまう私。もうすぐ夏だというのに酷く冷たい床下に手が悲鳴をあげた。どうやら気が動転しているらしい。なんとして立ち上がって風の原因を調べなきゃ、そう意気込んだ私の元に一筋の手が差し出された。
「失礼だけど、お手を拝借しても構わないかしら」
透き通った高級オルゴールを感じさせる美声。高くなくそれでいて低くもない声帯は女性のもの? 自身に向けられた真っ白な手に沿って上に視線をあげると髪が金色に染まった女の人がこちらを向いて立っていた。待ちぼうけてるいるのかイラつく顔に私は慌てて声を上げる。
「あ、あの、そ。その、えーと私、永山美夜って、いいマス。えーとその、」
「慌てる必要はないわ、永山さん」
優しく諭される口調。ああ、女ながらも引き寄せられる。じゃなくて、!?
「そうね、具体的にいうなら折角の仮入部生が入ってきたというのにお菓子の奪い合いをしている男子生徒についてあなたはどう思う?」
「え、その、はぁ?」
「そうよね、許せないわよね。お客様がそういうならしょうがないわ」
いや私何も言ってませんけど。というよりお客様? いったいこの美人生徒は何を言ってるんだろう、あまりにも一方向な会話な気が…。
「ほら早く立って」
「わ、」
いきなり両手を掴まれ体を抱き寄せられる私、ってこのシチュエーション何!? 私だけ場違いすぎるでしょ。
涙目になる私だが、彼女がそのままドアの方に向き返したことで私も同一方向に向き教室の中に目が行き届いた。風圧の原因は引き戸が急に開かれたことだと予想を立て私は入り口の前で喧嘩をしている二人組に目をやる。
ーーなるほど、二人とも黒目黒髪の日本人。身長差はすごいあるけどこの部活そのものが外人だらけの留学バケーションみたいなことになっていないのは幸いかな。
私がじっと見つめても態度を一切変えず口論を続けるその様は大胆というべきか。ならば自分の存在を明らかにしよう、と声を出そうとしたときに繋がれていた手が離される。
そして、
「あなたたちはいつまで続ける気かしら」
と、冷酷な冷めた声色が響いたところで口論が止まった。後ろから聞こえてくる声を自分に向けて欲しくないとソワソワしながら佇む私。
あの、帰っちゃダメ?
〜〜〜
「そうかそうか、君はこの部活の体験に…。ならば見苦しいところを見せた非礼を謝罪をしなければならないな」
「今更かっこつけても印象は変わらないわよ」
「元から容姿が優れてるわけでもないしな、このチビ」
外野からブーブ文句を言われるその様にはなんだか可哀想になってくる。見ると腕をプルプルと震わせ怒りをおさえているよう。見苦しいようだけど身長が低いからか幼な子が泣く前ぶれにしか見えない。
またもや話が潰れそうなので教室全体に目を通すことにする。そこで私に一本の疑問の蔦が舞い降りた。
ーーこんな場所で本当に活動してるの?
ぱっと見椅子と机が取り除かれた教室にしか思えない。現に端に積み上げられる事から事実として捉えられる。お世辞にも恵まれてるとは思えないこの部が他の文化部と一線を引いているのは単なる噂に過ぎない、と後付けされても今なら納得の代償になる。
「思考を巡らすことは脳の為になるとはいえ、此方の話を聞いてもらいたいな」
気がつくと三人の美男美女は私を目先でロックオンして高級じみた雰囲気を映し出していた。目に映るもの全てを鮮やかに表現する瞳の色は女が青いルビー色、喧嘩ニ兄弟は共通して夜を連想させる薄まった黒といった感じ。うっとりと見惚れる私であるが、その状態に釘を刺すのは小さい男の子の方だった。
「初めまして新入生くん。僕はこの部活で書記を務めている
その瞬間、心の中にあった足枷が少しだけ外れた気がした。
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