第83話 勇者レオンとの決闘になったぞ

ふふふ。やはりアルは真の勇者と見ていいな。だが、これで彼が一躍有名になりこの男の自尊心と虚栄心に傷がつく。


そしてアルを害し、外道の道に進めば、ふふ。


穢れきった勇者の魂は最高の栄養だ。


この男が堕ちるところまで堕ちれば邪神の欠片である私の元の力を取り戻せる。


私は勇者レオンに抱かれながらそんなことを思っていた。


「もういいよ。やはり手垢がついた女は好きになれないね。エルヴィンに散々教えこまれたようだね。ふ……なんでもするんだね君は。ねえ? 君、プライドはないの?」


「わ、私は魅了のま、魔法で……」


もっともらしいことを言うがほんとは私に魅了など効かない。


仮にも邪神の破片である私にそんなもの効くか。


自分から好きにされていただけだ。


単に私がビッチだからだ。


それに3回もしといてなんだよ?


「レ、レオン様もっとお願いします」


「仕方ないね君は……じゃあこっちに尻を向けて」


「あ、ありがとうございます♪ アンネ嬉しい♪」


なんだよ結局4回目もか。


しかも女の子に尻を向けろとか酷い扱いだ。


私はドMだからいいけど。


雑に扱われる方が燃える。


おとなしく尻を向けた。


でもレオン、私はドSでもあるのだよ。


ああ、君の魂が醜くどす黒く穢れたところを想像するとたまらない。


その時は美味しく頂いてあげる。


魂を食われたら永久に輪廻から外れる。


永遠の無に帰すのだ。


ふふ。


私はひそかに歪んだ笑みをたたえた。


そして、レオンにこう言った。


「レオン様。エルヴィン様に教えてもらったことがあります」


「なんだアンネ? 俺に益があるのか? 何故そんなことを教えてくれる?」


「王宮の地下の石に刺さっている聖剣は真の勇者様が使っていた剣で最強の力を得ることができます。レオン様にこそふさわしいかと。それにレオン様のお役に立ちたくて。役にたったら、もっと可愛がってください♪」


「ふふ。仕方がない子だね。あれのことを知っているのか。だが、あれは父上から手にすることは禁じられている」


ちっ、知っていたか。


あれは終末の化け物を上回る邪神の一部、クトゥルフの落とし子が封印されている。


ならば。


「残念です。勇者レオン様にこそ真の勇者様の剣が相応しいと思ったのに……このままだとあれはあの落ちこぼれのアルのモノに……」


「アルのことを言うなぁ!!」


「ひゃ!」


レオンはいきなり激怒すると私の尻を叩いた。


「アルなんかよりレオン様の方が上です。どうかアルに目にモノ見せてやってください」


「しかし、僕は父上に謹慎を受けていてね」


どうでもいいけど、こいつ上手いな。


エルヴィンみたいに急に魅了の魔法に目覚めてにわかの女たらしになったのと違って、こいつ相当女を泣かせているな。


「では、アルに決闘を申し込まれてはどうですか? アルはまぐれで偶然冒険者達みんなの努力の上にたまたまクリティカルヒットを出して美味しいところをもって行っただけなんです。だから1対1で戦えば必ず馬脚を現す筈です。あ、あん♪」


「なるほど、それはいい考えだ。これは褒美だ」


☆☆☆


俺とみんなはスタンビードの発生したダンジョンを制覇して王城に報告に向かった。


すると、王城の謁見の間に騎士に案内される途中、レオン王子に会った。


仮にも王族。俺は道を譲り。膝をついて頭を下げた。


しかし、レオン王子はかがんでいる俺の前で止まった。


なんか嫌な予感がする。


「君は今を時めくアル君だね。以前晩餐会で挨拶したか」


「はい。あの時はありがとうございました。レオン様とお話ができまして光栄でした」


一応王族だ。


リーゼの件でいずれ揉めそうだが、今はあまり積極的にかかわりたくない。


できればリーゼの父ちゃんに後ろを任せた上で何とかしたい。


だが。


「君にお願いがあるんだ」


「な、なんでしょう?」


「顔位上げてくれよ。僕は君を実力者と認めているんだ。だから、僕と決闘してくれ」


「え?」


俺は驚いてついレオンの顔を見上げてしまった。


「ようやく僕の顔を正面から見てくれたか? 僕に胸を貸してくれないか? 僕も仮にも勇者のはしくれ。英雄の君と一戦所望する」


どうしよう?


これ、なんか裏がありそう。


単なる鍛錬の一環とかじゃないような。


「返事は? 承諾してくれたら来週の日曜日に王都の広場のコロッセウムで決闘だ」


「し、しかし、何故決闘なんですか? 模擬戦ではないのですか?」


俺にはこの王子と決闘をする理由がない。


「レオン様。俺にはレオン様と決闘する理由がございません。決闘で万が一御身に何かあれば……レオン様は未来の王です。どうか危険な真似は自重下さい」


「ほお、まるで自分が勝つに決まっているというような言いようだな」


「そ、それは違います。俺はただ万が一を考えて」


「レオン殿下、ご主人様に何もメリットがないのです。ご主人様はついさっきスタンビードが発生したダンジョンを制覇したばかりなのです」


リーゼが間に入ってくれた。


助かる。


俺、王族とのやり取りなんてよくわからん。


「メリットか。確かに無いな。だが、デメリットならあるぞ。決闘を受けてくれなければ、リーゼ、僕は君を妾妃として迎えるように君の父上にお願いする」


え?


リーゼって俺の婚約者じゃないの?


「ご、ご主人様ぁ。お、お願いなのです。リーゼを守ってくださいなのです」


リーゼが涙目で俺の袖の裾をつまむ。


「わ、わかりました」


断れないじゃん、このクソ奴隷がぁ!

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