第57話 猫耳少女が拐われそうになる
「一瞬ときめいてしまったが、やはりお前は猫耳族の敵、ケモナーだな、やはりここを通す訳にはいかん!」
猫族の女の子はギリリと次の矢を引き絞り、俺に的を絞っていた。
まあ、弓矢位だと手で跳ね除けれるからいいのだけど、アリーやリーゼが狙われるとな。
クリスは勇者パーティで活躍していた位だから大丈夫。
しかし、何とか穏便に話し合えないものか?
そんなことを思っていると、俺の探知のスキルが危険な魔物をキャッチした。
「君!? 危ない! すぐに茂みとかに身を隠すんだ!」
「はあ? 何を言って? そうやって誤魔化して私を攫おうとか考えているのだろう?」
「いや、そうじゃなくて君の後ろから空を飛ぶ魔物が接近しているんだ!」
猫耳少女は全く俺の言うことに耳を貸さない。
ひたすら俺に的を絞り、矢を俺に向けたままだ。
だが、危険だ。
なぜなら猫耳少女は木の上にいるんだ。
高いところから狙うのは弓の基本だが、そこだと空から容易に場所が発見されてしまう。
「君、せめてその木の上から降りてくれ! ほんとにヤバい魔物が近づいてるんだ!」
「もっともらしいこと言って、有利な地形からわざわざ地上に降りるわけが、ええ!?」
言わんこっちゃない。
凄まじいスピードで接近していた魔物は猫耳少女は魔物にさらわれてしまった。
「どうしよう?」
「いや、放っておけば? アルの言うこと聞かなかったんだし」
「でも、あのままだとあの子…多分食べられちゃうと思うけど」
「ご主人様、命令です。あの子を助けるのです」
なんで奴隷から命令受けてんの、俺?
それとクリス、めっちゃ冷たい。
クリスは本来優しい子なんだけど、恋敵には容赦ないみたい。
でも、確かに放っておくのは忍びないな。
俺たちに関わったために攫われたようなものだし。
一瞬で遠くまで行ってしまった魔物を鑑定する。
「ワイバーンだな。どうりで速度が早いはずだ」
「でも、空飛ぶ魔物なんて、どうやって追いかけるの? アル君?」
「いや、普通に空飛んで追っかけるけど?」
「「「はあ?」」」
なんかいつものおかしい雰囲気になりそうだから、俺はさっさと飛翔の魔法を唱えてワイバーンを追った。
軽くマッハ1.5で巡航すると5秒で追いついた。
フレアアローの魔法を発動する。
そして正確にワイバーンの心臓を射抜く。
たちまちワイバーンは猫耳少女を落として落下し始めた。
いや、フレアアローって便利だよな。MP1でこの威力は美味い。
まあ、俺しか出来ん芸当かもしれんが。
「きゃぁぁあああああああああ」
悲鳴があがる。
いけね。
猫耳少女を早く助けないとな。
救いそこなうことなんてないけど、空飛べん人、めっちゃ怖いと思う。
いや、空飛べる人、ほとんどおらんらしいけど。
師匠も自分以外で空飛べる人に会ったことないと言っていた。
……師匠はコミ障の引きこもりだから参考にならんけど。
多分、意外といるのかな。
俺は猫耳少女をキャッチするとお姫様抱っこで彼女を運んだ。
「な、何するの?」
「いや、助けただけだけど?」
猫耳少女の顔を見ると、何故か顔が赤い。
いかん、急降下して血が頭部にたまったな。
「せ、せきにん。責任とってね……」
「え? 何か言った?」
猫耳少女は小声で何か言ったけど、なにぶん音速超えていて騒音でよく聞こえない。
そして、少女は怖いのか、俺の服の袖をつまんでいた。
なんか可愛いでち。
俺は元の場所に戻ると、少女を丁寧に地上に下ろした。
「はあ、もう、アル君は相変わらず非常識なんだから」
「えっ? 今、アル飛んでなかった? 幻よね?」
「クリスさん、これ位で驚いてるとご主人様とは付き合いきれないのです」
いや、人を変な人みたいに言うな、このクソ奴隷。
「あ、ありがとう。お前ら? いい人間なのか?」
「逆に、人間ってそんなに悪いヤツばかりなの?」
俺は不思議に思った。
確かに人間には悪いヤツがたくさんいるけど、良い人もたくさんいる。
例えば俺だ。
まあ、クリスも悪い人間じゃないよ。かなりいい子だと思う。
だけど俺と恋敵にだけ厳しいの。
アリーだって闇堕ちしてない時はいいヤツだ。
リーゼは……
こいつは半分悪者側だけど気のせいか一番まともな正義感とか倫理観持っているような。
最近改心したけど、相変わらずおれのこと奴隷として扱うし、横柄だけど、さっきも猫耳少女を助けるように言ったし……クリスはそのまま食べてもらおうとか恋敵には厳しい。
事あることにアリーを殺害しようとするし。
まあ、アリーちょいちょい例の黒い短剣で暗殺しようとするけど。
あれ?
二人共リーゼを殺そうとはしないな。
もしかして二人は本気じゃないのかな?
そうかも、そもそもほんとに殺したらただの殺人犯だしな。
じゃれあってるのかも、二人は歪んだ親友同士なのかも。
そっくりだもんな、あの二人。
そんなことを思いながらさっき助けた猫耳少女に目を移すと何故か少女は顔を真っ赤にして俺の事見つめていた。
いかん、加速しすぎて頭に行った血がまだ戻ってないな。
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