第13話 剣技の修行
災害級のホワイトファングの個体との一戦を経験して、俺は師匠に指南を乞うことになった。
もちろん、スライム達のレベリングは続けていた。
寝ている間にスライム5号から12号をオークの住む丘陵地帯でレベリングさせていた。
結果。
まずまずだ。
そしてアイリス達、1号から4号を南の山岳地帯に派遣した。
少し危険だが、例の山岳地帯のホワイトファングは狩り尽くした。
それで、別の方向の山岳地帯のホワイトファングを狩らせた。
スライムは素早いし、物理防御力がべらぼうに強い。
いざとなったら、すぐ逃げることも、仲間を呼ぶことできる。
それに、師匠が常時監視してくれている。
師匠の覗き見の犯行は魔道具で行ったらしく、しばらく二人っきりだから、魔道具でスライム達を監視してもらうことにした。
師匠は転位の魔法が使えるから緊急時は師匠に助けてもらう約束だ。
そんな訳で。
「えい、えい、えい!」
俺は朝から素振りを延々と行っていた。
師匠に朝から素振り10万回という無茶な要求されたけど、レベル467のステータスとスキル【ランニングヒール】をかけ続けるというアイデアでなんとかいっている。
いや、確かに俺、剣の基本は学んでなかったからな。
師匠の話によると、あの災害級のホワイトファング戦で剣が折れてしまったのは、俺の剣の太刀筋が悪いからだそうだ。
剣はまっすぐ線のようなものだが、当てる時は弧を描くように対象にあてないと、無理な力が剣にかかり、剣が折れてしまうことがあるそうだ。
つまり、俺が慌てて剣を捻じ曲げて振るってしまった為に折れたということだ。
それで基本の素振りをやっている。
まっすぐ、弧を描くように綺麗な形を身体に染み込ませる。
ちなみに、今俺が握っているのは木刀だ。
木剣ではなく、師匠は木刀を使って素振りをさせた。
理由は師匠が教えてくれる
刀とは東方の島国から伝わった剣の一種で、サムライやニンジャのジョブの人が好んで使う。厨二病を満たすな。
「よし、そろそろ10万回だな。今日の素振りは終わりだ。いよいよ直接指導の時間だ」
「はい! お願いします!」
俺は心がはやった。剣、いや刀の修行なんだが。
気持ちが昂ぶらない方がおかしい。落ちこぼれだった俺が本格的な刀剣術を学べる。
なんてなんて幸運なんだろう。
優れたジョブに恵まれても、正式な指南を受ける者は少ない。
なぜなら、正式な刀剣術を学んでいる者など僅かなのだ。
勇者エルヴィンや剣聖のクリスですら、きちんと学んでいない。
みな独学だ。先生が不足というより、この世界では正式な刀剣術自体が廃れているのだ。
それだけジョブの能力向上が著しいということだ。
刀剣術はジョブに恵まれなかった者が学ぶモノという風潮さえある。
「いいか、まずは基本だ。相手の剣を弧を描くように受けろ。決して1点で受けてはならん。そんなことをすれば聖剣だって折れる」
「わかりました!」
師匠の教えは新鮮だった。何故なら、普通、剣が折れないよう、より強力な材質の剣を揃えるのが普通だからだ。勇者エルヴィンの持つ聖剣はアダマンタイトという、最強の材料に魔法の加護を施してあり、余程のことがないと折れない。
だが、師匠は聖剣だって折れるという。
まあ、師匠のゴリラみたいな力だと何でも折れるよな。
「いいか、よく覚えておくのじゃ。たとえ、無銘の刀だとて、美しい曲線を描く剣戟では刀は折れぬ。力を全体に分散するのじゃ。そして、力を込めるのは一点のみ」
「はい! わかりました」
師匠の言っていることはなんとなくわかる。
素振り10万回をやったおかげで、俺の刀筋は綺麗なものになった。
そして、師匠と木刀を合わせると、以前より木刀にかかる力が小さいような気がする。
いや、気がするのではなく、事実、そうなんだろう。
無駄がない動きが、反作用を最小限に抑える。
「よし、一通り基本は教えた。次は実戦を想定した手合わせをやるぞ」
「はい!」
俺は意気込んだ。師匠に勝てるとか思わんが、爪痕は残さんとな。
師匠と木刀の先を合わせる。
「では始めるぞ!」
「はい!」
そういうと、師匠は単純な上段からの面を打って来た。
これは払って、胴を狙うパターンだ。
俺は師匠の木刀をいなし、そのまま無駄なく胴に一撃を……と、思った、だが。
「ゲフッ!?」
突然、腹を蹴られた。
「し、師匠、ズルい。剣術の模擬試合なのに、蹴るなんて!」
「何を言っておる? 魔物や敵がそんなマナーを守るか? そんなものは騎士団の模擬戦だけじゃ。奴らとて、実戦では蹴りも使うし、時には手で相手の目に砂を投げるぞ」
そうか、不知火流刀剣術は実戦的な流派だ。型だけじゃなく、実戦ありきなんだ。
「よし、戦いに何でもありということはわかったじゃろう? 次は刀剣術だけでなく、柔術や空手も教えてやろう、その次は魔法じゃ。刀は色々な要素を入れて戦うのじゃ」
「はい、よろしくお願いします!」
俺は運がいい。こんなに実戦的な流派を正式に学ぶことが出来るなんて。
そんなことを思って、午後の訓練をやっていて、夕方位になると。
「し、師匠、ギブ、ギブ! ていうか、胸を押しつけて窒息狙うのはなしです!」
「何を言っている? 戦いには何でもありと言うたじゃろ?」
いや、そうだけど、さっきから師匠は胸で俺の顔を圧迫したり、ふとももで俺の顔を圧迫したり。さっきなんか、股間を俺の顔に押し付けて窒息を狙ってきた。
柔らか過ぎて気持ち良すぎる! 絶対師匠はエロいモードに入ってる。
「師匠! 下心が丸見えです。セクハラはダメです!」
「何を言うておる、我は単にお前に極意を伝授しようとだな」
「俺には胸ないし、そんな技は必要ないです。何より、師匠、涎を拭いて下さい!」
師匠はだらしなくはあはあしている上に涎が出てる。
ほんと、清楚で綺麗な容貌が台無しだ。もう師匠は痴女の本性を曝け出していた。
男の子の俺が我慢してるのに、我慢できない女の子って、どんだけ痴女なんですか?
「あれ、バレた? 我の企み?」
「バレバレです!」
そうこうしているうちに、アイリス達スライムが帰って来た。
「ちっ。せっかくの二人きりの時間が……」
この師匠大丈夫か?
というより、俺の貞操大丈夫か?
師匠に本気で襲われたら、力で勝てないから、レイプされてしまう。
俺は師匠に良識があることを祈った。
多分、ないと言う気がしたけど。
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