第4話初めての依頼。そして……
僕達が異世界転移してしまって転移先で出会った初めての理解者…それが今僕達と話をしているダンさんだ。そして彼は今まさに依頼をしてきたのだ。
「という訳で、その依頼なのだが…。」
ダンさんは強引に依頼をしてきているんだけど、ある意味僕達にとっても有難い話ではあるよね。
「ダンさん、その依頼の内容を聞きたいのですが。」
僕は当たり前のように切り返す。
「それなのだが…実は、私の持つ物件の一つに『スライム』というモンスターに住み着かれてしまった物件があってね…。」
スライムといえば冒険者にとって入門編的な位置だと僕は思っていたんだけどダンさんは困った表情をしながら続ける。
「実はね、私の物件に住み着いたスライムが…ちょっと特殊なんだ。」
「特殊なスライムですか?」
僕が問いかけるとダンさんはため息混じりに答えたんだ。
「そうなのだ…元々武術家の私は岩をも砕き鋼鉄にも穴を開ける事も出来るのだがあのスライムは特殊で私の打撃がほぼ効かないんだ…。」
ダンさん程の実力者が苦手とするスライムとは…。僕達に倒せるのだろうか…。そんな事を考えているとダンさんは説明を始める。
「スライムの名は【スモッグスライム】ゼリー状と煙状二種類に状態変化する厄介なスライムなんだ。」
ダンさんの苦手とするスライムは聞くだけで厄介そうだ。でもその前に僕達には武器も何も無いのに戦えるのか?僕はそう考えているとらいとが前に出る。
「そういう事なら俺達に任せろよおっさん!」
「えっ?何言ってるのらいと!僕達武器も無いのにさあ……。」
僕の訴えは当然だと思う。そりゃそうだよね、戦闘経験も僕にはないしさ…らいとはそりゃあいつも喧嘩ばかりしてたけどさ。僕には戦いなんて無理だよ…。そんな事を思っているとらいとが僕の肩をポンと叩いてくる。
「みら!そんな顔するな!俺に任せとけ!」
「らいと…。」
そんな話をしていた僕達にダンさんは声をかけてくる。
「そうそう…君達はこの世界にきたばかりなのでね…私からプレゼントをしておこう。」
そういうダンさんはソファーから立ち上がり奥の部屋に消えていく。そして数分後…僕達が待っている応接室にある箱を持って帰ってきたんだ。ダンさんがソファーにかけると目の前のテーブルに箱は置かれた。いかにも宝箱って感じの箱だ。ダンさんが宝箱を開けるとそこには二つのシルバーのブレスレットが入っていたんだ。
「これはね…『魔法の腕輪』と呼ばれる代物でね…。」
ダンさんはそう言うと語り出す。
「この世界の月が欠け落ち闇に沈んだ時…二つの光と闇が現る。命運はそれに委ねられる。これが世界の理である。」
僕達がその言葉を聞いていると話は続く。
「私が見た所…君達の瞳に映るその魔力を感じる瞳…きっと君達が今話した言い伝えの者ではないかと思っているんだ。」
ダンさんは僕達の事を過大評価してる気が…。僕はそう考えているとらいとが腕輪を取り出し左手に装着したんだ。
「おお!これカッケーじゃん!」
「ああっ!勝手につけてるし!」
僕は焦っているとダンさんは突然笑いだした。
「ハッハッハ!君は本当に面白いな!」
「ダンさん笑い事じゃありませんよ…」
僕はため息混じりに言うとらいとは突然焦りだしたんだ。
「ん!?お!なんだこれ外れねえぞ!」
「ええっ!ダンさんどういう事!?」
僕が聞くとダンさんはニヤリと笑う。
「やはり君達は選ばれし者なのだな…。魔法の腕輪に選ばれたのだ。」
ダンさんは感心しながら言う。
「さて、二人ともその腕輪を持って私と来てもらおうか?」
「えっ?待って!この状況でどうやって?」
「大丈夫だ、みら!俺には何となく分かる。行こうぜ!」
ダンさんとらいとは頷くと部屋を出ていく。僕はブレスレットを取り出すと二人の後を追ったんだ。
「待ってよ!」
僕とらいとはダンさんの後を着いていくと街外れの小さな丘へと進んでいく。すると小さめではあるがちょっとした洋風の一戸建ての家に辿り着いたんだ。
「ここだ。」
「おお!凄い!めっちゃファンタジーな家だ!」
僕は興奮気味に叫ぶ。らいともニコニコしているとダンさんは扉の鍵を開け中へ入っていく。らいとが続き僕もこわごわ中へと入ってみる!中に入ると綺麗な部屋があった。
「おお!綺麗な部屋だね?」
「本当だな?ここになにか…」
僕達がそんな話をしてるとダンさんは部屋の更に奥へと入っていく。そこには鉄の扉があり扉には五芒星が記されている。
「さあ…扉を開けるぞ…ここが目的の場所だ。」
そう言うとダンさんは鍵穴に不思議な形の鍵を差し込み最奥の部屋を開けたんだ。ガチャリという重い音がし解錠した事が音でわかる。そしてダンさんはギイーーーッという音を立て扉を開けると中に入る…後ろに続く僕達。数歩入っていくと部屋の奥からシュオーーーッと声なのか何かの音なのか分からない叫びのようなものが聞こえ僕達は立ち止まった。
「さて…奴が来るぞ……。」
ダンさんの声と同時に僕達に向け何かが飛んでくる!
「みら!伏せろ!!」
らいとの叫びが聞こえたと思うと同時に僕は床に押し倒されると僕の後ろでガタンと音がし、僕達が振り返ると後ろにあった椅子はシューという音と煙を出し溶けていった。
「なっ!?」
「あれはきっと塩酸みたいなもんだ!やつの攻撃の一つだな…。」
らいとは僕を庇いながら叫んだ。
「そうだ…だがこれはスライムの類いには多い攻撃だ。だが、まだ序の口だ。」
そう言うとダンさんは僕達の前に立ち塞がる。そしてスライムを目の前にし身構える。
「いくぞ!見ていてくれ!」
ダンさんが叫びスライムに猛然と走り寄る!!
ダンさんの連続猛攻撃!!
「はああああっ!!」
彼の正拳も蹴りも凄まじく息もつかせぬ猛攻!!スライムの身体はズブズブと形を変え
ダンさんの攻撃を吸収していく…。
「き…効いてないみたい……」
「あのパワーが無効化されちまってるぜ……。」
「うおおおおぉ!!これならどうだ!!」
ダンさんの身体は赤く光り出し力を溜めていく……。
『
ダンさんのほとばしるパワーに熱がみなぎり炎の龍が身体より現れ腕から発せられる!!炎の龍はスライムに向かい飛んでいく。
「やった!?」
僕がそう言うとボロボロのスライムは消えていくかに思われた。するとスライムの身体は煙状に変化していきその身体は再生されていく。
「マジか!?」
「これが私には倒せぬ理由なのだよ……。」
彼はそう言うと唇を噛み締め震える。ダンさんという実力者からしたらスライムに不覚をとっている…という屈辱があるのだろう…。スライムといえば最弱というイメージ的な屈辱…でもこのスライムは本当に厄介だという真実。
「ダンさん……。」
僕はダンさんになんて声をかけていいか分からない状態でいるとらいとが前に出る。
「ようし!こうなったら俺がやってやるぜ!」
らいとが叫んだ!ちょっと待ってらいと…確かに僕もらいともちょっとした魔法は使えたけどさ…。でも…バトルになったらあのパワーでは辛くない?ダンさんよりずっとずっと…パワーも無いしさ……。僕はそう考えてるとらいとは構え、そして集中していく。らいとの身体は黄色に光り輝きバチバチ音をたてている…。
「!?あ…あれは雷か…私はこの世界ではレアな雷属性の魔法は初めて見たぞ…。」
「えっ?雷属性ってこの世界でレア魔法だって事?」
「そうだ…この世界の魔法は火、水、風、土の四属性と特殊属性の光と闇二属性からなる。本来、雷属性などは存在しないのだ。」
「そうなの?じゃあらいとは!?」
「私の見立てでは…きっと選ばれし者の力……そして、君にも何かしらの力があると私は思っているよ。」
「えっ?僕にも何かの力が…?」
僕達が話しているとらいとが叫んだ!!
「行くぜ!!おかしなスライムーーーッ!」
そして、らいとはスライムに攻撃を仕掛ける!らいとの雷を身に纏った高速の攻撃!
「うおおおおぉ!!」
スライムに高速の連続攻撃!スライムはらいとの攻撃によりバチバチ音を立て痺れている。
「おお!これは効いてるぞ!!スライムの身体の水分…細胞一つ一つにその攻撃は効いてるぞ!!」
ダンさんが叫ぶとスライムは堪らず身体を変化させていく…。
「いかん!スライムが気体化してしまうぞ!!」
僕は無意識に静かに魔法の腕輪を装着していたんだ。その瞬間突然全身にビクンと走る衝撃!
「何これ!?」
らいとが僕に走り寄ってくる。
「みら!?大丈夫か!?」
らいとの声が聞こえたかと思うと僕の意識は薄れていく…。
(ここは…どこ?僕は腕輪をつけて…気を失ったんだっけ…。何か遠くから誰かが僕の意識に声をかけてくる。)
⦅君が私の力に選ばれし者か?⦆
(えっ?僕に話かけてくる、この声は腕輪の何かなのかな?)
⦅そう、私は魔法の腕輪に宿る魂の一つでその
(魔法の腕輪の魂?)
⦅私の力を授かる君には力を貸す事にするよ!⦆
(僕はどうすればいいの?僕はらいとみたいに戦えないよ!)
⦅大丈夫だよ、君達に私達は力を貸す事にしたんだ。それが君達をこの世界に召喚した者の努めだから……。⦆
(えっ!?ちょ!ちょっと!?)
⦅では…話はいずれ…。⦆
「み!みら!?」
「ん……ぅ〜ん...あれ?らいと!?」
「良かったぜ!気がついたみたいだな?」
僕は気を失ったみたいだ。でも今誰かと話してたような…あれ…覚えてないぞ…。すると僕達の目の前にモヤモヤした煙状のスライムが揺らめいていた。
「くっ!?さすがに気化しちまうと俺の攻撃も効くか分からねえぜ…。」
そう言うらいとの横に僕は立った。
「ん?みら!?」
「大丈夫だよらいと!僕になら何とかできる気がする!」
「みら!何言って……。」
らいとの隣で僕に力が湧いてきている。魂から全身に魔力が周り全身に魔力が伝わる。
「いくよ!生活魔法!【クラフト!ビック扇風機!!⠀】」
僕の手から硬い紙が出ていくと巨大な扇風機を作り上げる。
「な!なんだアレは?私達の文明には無いものを創り出せるのか!?」
ダンさんが叫んだのを耳にしながら僕は魔法を発動させる。
「今だ!!たあああっ!!」
巨大な扇風機の刃は高速回転し気化したスライムを吹き飛ばしていったんだ。
「やったか!?」
「まだみたいだよ!僕が捉えるかららいと!トドメをよろしく!」
スライムの身体が再生されていく。
「いくよ!生活魔法【凝固剤!!⠀】」
スライムの身体は凝固剤により固まってしまった!
「これならイケるぜ!うおおおおぉ!!破壊しろ!『雷!!』」
バリバリという轟音と超スピードの攻撃により固まったスライムは粉々になり消えていったんだ。僕が気づくと部屋から邪気は消え去っていたんだ。
「おおぉぉおおお!!やったぞ!二人とも!!」
ダンさんは目をキラキラさせて喜んでいる。
「あ…あれ……。」
「み…みら!?……あれ……俺も……視界が……。」
僕達はそのまま倒れたみたいだ。そして……。
僕は目覚めるとどこかのベットで目を覚ましたんだ。周りを見回すと隣のベットには誰かが寝ていた形跡がある。
「ここは、どこだろ?あれ?」
「!?あれ?らいとは、らいとはどこ!?」
僕が叫ぶとガチャりとこの部屋の扉が開いた。
入ってきたのは僕の相棒らいとだ。
「お!みら!目が覚めたか?」
「うん!らいと!心配かけてごめんね…。」
「目を覚ましてくれたし無事ならいいぜ!」
らいとはそう言ってニコニコしていると…。そこにダンさんが豪快な声をあげて入ってきた。
「お!無事で良かった!ハッハッハ!」
「ダンさんもありがとうございます!ご迷惑おかけしてすみません。」
僕の暗い声を消すかのようにダンさんは言葉を続ける。
「いやいや…二人共本当に今回はありがとう!」
「いえ…僕なんか逆に迷惑かけてしまって…。」
僕が呟くとダンさんはニッコリしている。
「君達はやはり私達の世界に起ころうとしている何かを食い止めてくれる存在だ。今回で思い知らされたよ…。」
らいとを見ると真剣に話を聞いてるみたいだ。そしてダンさんは続ける。
「みらい君もらいと君も今はまだ来たばかりだし戦闘もまだまだ経験を積まなければいざと言う時自分自身も危険になるだろう…。」
僕は初めての戦いを振り返る。確かに僕も戦う事は出来た。でもこれから何が起こるか分からない。不安もまだ多い。
「そこでだ!君達には私がギルド長をしているこの街のギルドで経験を積んでいってほしいと思っている。」
「えっ!?」
僕が叫びらいとを見るとキョトンとしている。
「いや、悪い…らいと君にはみらい君が起きるまでこの話はしていたのだがみらい君の同意が必要だと言っていてな。」
「って事なんだけど、ギルドで働きながら修行にもなるしダンさんのこの貸家もダンさんの補償で貸してくれるらしいぜ!」
僕は驚いていた。色々な情報を一つ一つ飲み込んでいく。この世界で暮らす為の家を借りれる事、それにはギルドの仕事をして生活するお金も何とかなりそうだという事。これで僕達の異世界での生活はスタートするんだという事を僕は実感したんだ。
「ダンさん!らいとのようには中々いかないけどよろしくお願いします!」
「ああ!君達のサポートは責任もってさせてもらう!こちらこそよろしくな!」
僕とダンさんは改めて挨拶をするとらいとは僕の手を取り手のひらを自分に向ける。そして…パンッ!!
僕にハイタッチする。
「改めて!みら!異世界楽しもうぜ!」
「うんっ!!」
ユメカナッ!!本編第四話お読みいただきありがとうございました!
これからのみらいとらいとの活躍皆様お楽しみください。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます