【 未来への呪文 】


「はぁ、はぁ、はぁ、マモちゃん、やっぱりここにいたんだ。はぁ、はぁ……」


 自転車に乗って、モエ姉は僕のいるこの川の土手までやってきた。


「あのね、お父さんとお母さん、あれから仲直りしてた。マモちゃんが言った言葉で、ふたりとも反省したみたい」


「えっ……?」


「マモちゃんの気持ち、ふたりに通じたみたい。私にはできなかったけど、マモちゃんがみんなを救ってくれた。家族の危機を、マモちゃんが救ったんだよ」


「ぼ、僕が救った……?」


「そうよ、マモちゃんが救ったんだよ。私たちの未来を……」


 モエ姉は、確かにそう言った。

 僕が救ったんだと……。


 何もできないと思っていた。自分は無力だと思っていた。

 もう、元に戻ることなんて、できないと思っていた。


「マモちゃんの復活の呪文、みんなに届いたよ」


「復活の呪文……?」


「そう、家族の復活の呪文……」


 モエ姉は、自転車から手を離すと、その自転車は土手に倒れた。


 代わりに、その彼女の手は、僕の背中へと回った……。



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