【 家族ガチャ 】


「ど、どういうことなの……? そういうことって……」


「あぁ、母さんね……。だから、お隣の高科たかしなさんと結婚することになって……」


 母の答えに、我が家のリビングが一瞬、凍りつく。

 それを振り払うかのように、背の高い黒縁ダンディーおじさんが口を開いた。


「あぁ、まもるくん。話すの遅くなって申し訳ないんだけど、君のお母さんと結婚することになってね……。今日、婚姻届を出してきたんだ。それで、今日から一緒に住むことにしたんだよ……」


 おいおい、やめてくれよ。そんな冗談は……。

 この今、目の前でハンカチで汗を拭きながら話している隣の黒縁ダンディーおじさんが、今日から僕のお父さん……?


 まだ、前の父さんと別れて2年も経っていないのに……。

 それに、年の離れた姉さんだっていたんだ……。

 姉さんは、結局、父さんの転勤と自分の大学入学が重なり、一緒に東京へと行ってしまった。

 それなのに、この今、目の前で起きている『家族ガチャ』……。


「そういうことだから、弟くんよ。よろしくね~♪」


 そして、今、白いソファーの背もたれに暢気のんきに腕を組み、その上に顔をちょこんと乗せながらこっちを見て笑っている彼女……。


 僕の気持ちを知ってか知らずか、口元の左側にある小さなホクロが今日も僕の気持ちを誘惑する。


「モ、モエ姉もえねえが、今日から僕のお姉さん……?」


「そうよ、もえちゃんと仲良くしてあげてね」


「マモちゃん、よろしく~♪」


 そんな……。

 そんなこと出来るはずがない……。

 だって、そうだろう……。


 そんなにセクシーな唇をこちらに向けてとがらせないで、モエ姉……。


 僕は、ずっと……


 14年間も……


 君に恋をしていたのに……。



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