第10話 看病と許嫁2
さっきまで皆無だった食欲が嘘のようにバクバクと食べる事が出来た。それくらいお粥が美味しかったのだ。
「ごちそうさま」
「全部食べましたね。えらいです」
お粥をよそっていた皿を海野さんに渡して、俺は横になる。
「食べてすぐ横になると牛になりますよ」
「あはは、今日くらいは勘弁してください」
「もう、今日だけですよ」
そのまま睡魔に襲われて俺は眠った。
「うう・・・・・・」
どれくらい寝たのだろうか。この目線からじゃ時計が見えないので今何時かが分からない。でも、少し体は楽になって、今は苦しくない。寝てて正解だった。
少しずつ目が覚めていくと頭に違和感を覚えた。
いつも使っている枕の割には少し弾力があるのだ。すごく寝心地が良いのでずっとこうしてたいくらいだ。
寝返りを打つと、壁にいつも使っている枕が目に入ってくるのだ。どういう事だ。じゃあ今俺が頭に乗せているのは何なんだ。
「あら、やっと起きました」
「はにゃ?」
俺とは違う人の声が聞こえる。この家にいるのは俺か海野さんだ。
海野さんだったらワンチャンあるかもと思うが自分の顔の真上から聞こえてくるなんて事はまずないだろう。
だったらこれはなんだ。再び自分に問いただして冷静になる。
「大丈夫ですか? まだ寝てていいのですよ」
やっぱり真上から海野さんの声が聞こえるのだ。この瞬間俺は確信した。
俺は今海野さんに膝枕されているのだと。
「すみません、起きちゃって」
海野さんの膝の感触が体の感覚を伝わってくる。女の子の膝ってこんなに柔らかいんだと今身を持って知ってしまった。
とりあえず体を起こし、後ろを振り向く。そこには両膝を抱えてこちらを見るめる海野さんの姿があった。いつもは白色のハイソックスなのに今は黒色のタイツを履いているのが目に入ってくる。
「どうでしたか、私の膝枕は」
「どうでしたかって言われても・・・・・・」
柔らかくて最高です! なんて言えるわけもなく、ただ俺は赤面して目線を逸らす事しかしなかった。
その事を察してくれたかのように、海野さんが先に口を開いてくれた。
「それなら、もっと触ってみますか?」
「は、はい?」
「こんな事を言うのもどうかと思いますが、膝枕したの城道君が初めてなので・・・・・・」
「そ、その・・・・・・」
焦らして答えを言わない俺に嫌気がさしたのか、今度は向こうからアプローチをかけてきた。
「私の膝枕では・・・・・・不満ですか?」
上目遣いでうるうるとした顔で見つめてくる海野さん。目をしらしてまたやり過ごそうと思ったが、今回はそうもいかなかった。俺が答えを言わずにモジモジしてるから、海野さんは困っているんだ。見えない何かに縛られているかのように辛そうな顔をしているのだ。当たり前だが、海野さんの悲しいんでいる顔なんて見たくない。
それなら、
「まあ、こんな事言うのもあれですけど・・・・・・良かったです」
恥ずかしくても、正直に言う。それが今の海野さんにとって最適だと思った。
すると海野さんは両手で俺の手を掴んで、
「嬉しいです!」
暗い出来事や嫌な事なんてどこかに消えて見ている自分も自然と笑顔をもらえるニコッとした顔で言った。
やっぱり海野さんには暗い顔じゃなくて笑顔が似合うな。
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