“好き”って言ってみたらどうなの?

クラウン メアリー

第1話

「桟橋琴、そんなパンだけじゃお腹空くだろ?わたしが作ったクッキーいるか?」

「ありがとう、ムラサメくん。いただこうかな」

わたしの名前を呼ぶのは同僚の桐谷ムラサメ。

乱暴な口調な割に料理は美味しいし、モデル体型。

身長は160センチと高く、胸はCカップ。

髪はショートの青色で男性研究者からもモテる。

世間一般でいうと美女かイケメンの枠に該当する。

「さすがだね。ムラサメくんのクッキーは美味しいよ。毎日、食べたいくらいだ」

生地に練り込まれたチョコレートがいい味を出しているし、食感もサクサクしていて最高だ。

「ああ、毎日?作ってやってもいいけど、わたしに対しての告白か?」

ムラサメが放つ言葉に空気が変わる。

周りの人たちは「またか」と言う目で見てくる。

「お?なぜそう思えるんだい?もしかして君——」

わたしとムラサメは同じ言葉を放つ。

「「わたしのことが好きなのか?」」

これはプライド高いわたしとムラサメが互いに好きと言わせたい物語。


「はぁ……今日もいい顔だったな」

全く、あいつは顔が良すぎるんだよ。

無意識に近づかないでほしい。

イケメンすぎて息ができなくなってしまう。

「あー早くわたしのものにならないかなー」

といっても自分から告白する気はさらさらない。

自分でも知ってる通り頑固で傲慢、それからプライドの高いわたしが告白などするなどナンセンスである。

「どうせなら好きって言われたいし……」

あの乱暴な口調でわたしの名前を呼んで好きって言われてみたいものだ。

「また惚気ですかにゃ、琴ちゃんや」

「違いますけど?」

「はいにゃ」とコーヒーを渡してくれるのは幼馴染の猫又彩。

家が隣で生まれた時から一緒にいる。

身長は145センチと小柄で水色の髪の毛。

研究者ながらも白衣を着ることなく黒色のネグリジェの上に白いコートを羽織った個性的なファッションをしている。

ムラサメとは違う類の美女枠に入る顔立ちだと思っている。

そんな彩のことをわたしは信頼しているので愚痴も彩にしか話したことはない。

まぁ、先程のように惚気と馬鹿にされるだけだが……。

「そんなにムラサメちゃんのことが好きなのかにゃ?」

「む……」

それを言ったらわたしがムラサメを好きだと認めてしまう。

「はーいつからそんな乙女チックになったんですかにゃ?ムラサメちゃんに会う前の琴ちゃんなんてそれこそムラサメちゃんみたいにイケメンで態度もでかくて表情筋なんて動いてなかったにゃ……いでで!」

「うるさいわ!」

お喋りな彩の口を引っ張る。

「ふふひてだひゃい!」

「まったく……」

彩の口を手から解放する。

「わたしだって変わった自覚はあるさ。君以外に友達だっていなかったしね」

「その通りにゃ」

社会人となった今も友達と呼べるのは数えれる程であるし、大学生までは彩以外関わってくれる人すらいなかった。

ムラサメと出会ったのはこの研究所に入った最初の歳。

わたしと同じく入社からエリート扱いされて普通なら十年以上かかってから研究所から支給してもらう自室をわたしとムラサメはたった三年でもらうことができた。

彩がいるのはわたしの自室に居候させているからだ。

居候されている代わりに掃除や洗濯、食事まで全ての家事を代行してもらっている。

「あ、食事といえば……」

今日のクッキー美味しかったな。

何かお返ししたいところだけどわたしが人に渡せるほどのものなど持っていない。

仕方ない、ここは先人の知恵を借りるしかない。

「なぁ彩。ムラサメにプレゼントを渡したいんだが——」

「にゃんだって!!」

わたしが話している途中なのに彩が叫ぶ。

「あ、あの琴ちゃんがプレゼント!?もちろん協力するにゃ!」

あのとは失礼だが協力してくれるのはありがたいので黙っておくことにした。

「ふふ……覚悟するんだなムラサメ」


琴が彩と話している一方、ムラサメの方は

「琴、可愛すぎる!」

「うるさいなームラサメ。クッキー渡したんだからいいじゃんかよ」

「そうだけどさー」

ムラサメと話しているのは山寺高嶺。

身長170センチとムラサメよりも高く灰色の長い髪は腰まである。

常にマスクをして研究に没頭している。

ムラサメと琴に続くほど優秀で努力を怠らない。

基本的に無口だがムラサメの相談には乗ってくれる優しい奴である。

ムラサメとは幼馴染でありムラサメの相談相手でもある。

「琴さんのどこがいいの?」

「そりゃあ、あの長い紫色の髪と黒縁の眼鏡。低めの身長なんかも最高だし、胸も大きい。一見可愛い子かと思ったら態度がでかいからそのギャップがなによりも尊いね」

「うわ……大好きじゃんかよ」

ムラサメの語りに若干引いてしまう高嶺。

その様子を気にもせずムラサメはあくびをしながら机に向かう。

「あー早く折れてくれないかな……」

「ムラサメが折れるのは……まぁ、無理か」

わたしは恋に落ちなんじゃなくて落としたい。

「で、次は何すんの?」

「んーどうしよっかなー」

クッキーは喜んでもらえたようだし次も食べ物系でいこうかな?

いつも栄養の悪いものばかり食べてるから弁当も作りたい。

でも、それだと好きって言ってるみたいだからどうすれば良いものか……。

「あ、いいこと思いついちゃったかも」

「ん?なになに?」

閃いたように高嶺が手を叩く。

「今度、買い出しついでにデートしてくれば?」

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