▄︻┻┳═一 七発目 ≫【問い】
夕暮れのせいで建物は茜と黒でコントラストをつくる。そして路地の闇から現れて彼はこういった。
『こっちにおいで……さぁおいで……』
明らかに怪しいと頭ではわかっているのなぜか体がいうことを聞かなくて、ゆっくりとその影に近づく。人型の影は私の顔目がけて手を伸ばした。そして次第に周りの風景も見えなくなり、私の視界すべてが闇に包まれた。
『捕まえた——』
“ボーンボーン”
ふとカルミアの古時計が鳴るのが聞こえてきた。カウンター席で腕を枕にして寝ていたらしい。朧げな目で時刻を確認してみると午前零時だった。
「お目覚めのようですね」
マスターがグラスを拭いている。私、いつ間に寝たんだろう。軽く背伸びをして髪の毛を撫でて整える。
机に置いてあったレモネードは三分の一ほど残っていたが、氷が溶けたせいで色が薄くなっている。それに口をつけたが案の定味が薄い。
「リリィ様がうたた寝なんて珍しいですね。やはり依頼が
「別に」
確かに思うような成果が得られていないのは事実。そんなのは私が一番よくわかっていた。だから他人に決定的なことをいわれると、自分が無能だといわれてるみたいで吐き気がする。私には私のペースがあるだけだ。決して無能じゃない。
シャカシャカとシェイカーをふるマスターを無視した。頬杖をついて不貞腐れるように壁をぼんやりと見ていた。
「お待たせしました」
できあがったレモネードが目の前に置かれた。いつものグラスにいつものように入れられたそれを見てぐっと自分に寄せた。だれも取りはしないのに大事そうに両手でグラスを持った。冷たいレモネードがストローを通して口に広がる。それでようやくマスターの目を見て気になっていたことを聞いた。
「マスター、なんで私にあんな依頼渡したの」
「資料をご覧になられたのならおわかりだと思いますが、リリィ様が最適だと上がおっしゃいまして」
納得がいかなかった。あんな目にあったんだ。
マスターにもう一度依頼書が見たいとお願いすると、「かしこまりました」と奥へ消えた。ひとりになったカウンターに静かな時間が流れる。
「私が最適ねぇ」
その流れに身を任せて先日のことを思い出す——
抱き抱えるように手を伸ばし、男は優しく唇を重ねる。そして次は舌をというとき、男はそのまま覆いかぶさるように寝てしまった。くせぇ……。
ため息をついてその男を横に蹴飛ばした。そして
ドアのカギが閉まっているのを確認し部屋の中を見渡す。もちろんこの個室に監視カメラなどあるわけもなく、ドアも防音で外からは中の様子が一切わからない。
店員に
安全が確保された空間。黒い手袋をはめて男の私物を
持ってきていた任務用のスマホで写真を撮り、情報を盗む。そして元にあった場所に戻した。
いまだいびきをかいて寝ているターゲットに目をやり、今度はやつのスマホに探りを入れる。ロック解除は六
私は思い出すように指を滑らせてパスワードを入力する。
“**◯◯◯◯”
“******”
“◯◯◯◯◯◯”
ロック画面のパスワードは消えて元に戻ってしまった。おかしい、確かにちゃんと見たはず。私はスマホを持ったまま固まっていた。打ち込んだパスワードのどの部分が間違っているのかわかるわけがない。かといってすべての可能性を試している暇もない。
薄暗い照明に照らされた私はじっとりとした汗をかいていた。
諦めるか。
可能性にかけるか。
『フンガァァ……』
男が大きないびきをかいた。
『
スマホとベットで寝ている男を交互に見た。あれ、もしかしていける? スッと立ちあがって、男の顔をスマホの画面に映るように持ってくると……。
『ザルかよ』
男の寝顔を読み取ってスマホのロックが解除された。ため息混じりにソファに座って必要な情報を入手する。
メールアドレス、電話の通話
病室で兄弟仲良く写真を撮ったらしい。しかも何枚も。画像をスクロールしていくとたびたび弟の写真がある。誕生日ケーキを吹き消す弟、手術成功にピースサインをする弟、兄の顔にいたずらした弟。
この男は大層弟を愛でているようだ。残された唯一の家族だしそれに対して同情するが情けはない。
利用するしかない。
私の目は照明のせいで赤く染まっていた。
私は自分のカバンから特殊なコードを取り出し、自分のスマホと男のスマホを繋げた。
“CONNECTED”
画面に表示された文字をタップして操作を続ける。
それから数分後、コードを外してカバンにもろもろしまった。男はまだ寝ている。もう一度周囲を確かめ今度はハンカチを取り出して、グラスやドアノブなど触れた物すべて拭いた。もちろん髪の毛があちていればそれも拾った。
私がいた痕跡をなくし作業は終了。ぐっすり寝ている男をひと目見てこの部屋を出た。廊下に出るとタバコの臭いがした。しかし部屋の重々しい空気よりいくぶんかマシだった。
店員にはこの男の支払いといって早々に帰宅した——
「情報は手に入ったが、あいつからもらった睡眠薬が効くの遅くて大変だったんだ」
パブでのできごとに不満しかなく、それをマスターに当てつけて愚痴をいった。
マスターはいつものように「
この依頼書は比較的丁寧で、その文面にはあの男の情報が書かれていた。名前は
依頼内容は猿飛燕の暗殺および契約書の
「この仕事、私よりフォリアのほうが最適なんじゃないの」
「フォリア様は別の依頼をなされていますゆえ」
「どいつもこいつも七面倒くさいな」
改めて依頼内容を確認して手紙を封筒に戻す。それをマスターに返してレモネードで頭を冷やす。どんな依頼でもこなしてきたから、内容がどうであろうと気にしない。他人の愛人を殺せば金がもらえる。機密情報をリークすれば金がもらえる。この組織にいれば自然と仕事は入ってくる。それだけ世の中は汚いということだ。
この猿飛って男もどうせ同じだろう。シティに身を置いたのは最近のことだし、それでいて“
家族のために手を汚したあげく、女子高生のターゲットになるなんて夢にも思ってないだろうな。
このシティも、ターゲットも、未成年が最適というこの組織も、まったく七面倒くさい連中ばかりだ。
「今後の計画はおありですか」
マスターに声をかけられて私はスマホを取り出して画面を見せる。
「GPSを取りつけておいた。まずは契約書を探す。そのあとはいつもどおり」
納得するマスターは「少々お待ちください」とひと言残して、上機嫌に店の奥に消えていった。
私のスマホは点滅する位置情報がマップ上に示されている。ため息混じりに気だるく電源を切る。そしてレコードに耳を傾けながら静かに目を閉じた。
どこか懐かしく
気がつけばレコードは終わっていて古時計の音しかない。チックタック、チックタック。
マスターが戻ってきてレコードを交換する。それを頬杖をついてぼーっと眺める。そしてマスターは小皿を取り出し、そこになにか盛りつけた。
「先日知り合いからいただいた台湾産のドライマンゴーです。酒のつまみにも小腹を満たすのにもうってつけでございます」
「なら、今日は飲んでいいってこと」
「無論、承知しかねます」
わかりきった返事を「やっぱり」と受け流して、小皿に盛られたドライマンゴーをひとつ手に取り匂いを嗅ぐ。
薄くスライスされたマンゴーは綺麗な山吹色をしていて、砂糖のみたいな粉が軽くふりかけられている。南国の太陽を浴びて熟れたマンゴーを想像すると味まで鮮明に感じる。
そのまま口に運び、ひとかみ、またひとかみと口で
ひとどおり味わい、飲み込んでもその香りはまだ口の中に残っていた。そこにレモネードをあわせるとレモンの酸味をマンゴーが穏やかに包んでいき、ミックスフルーツのような風味を醸し出している。
ふーっと息を吐いてこのドライマンゴーの美味しさを評価した。マスターも鬼灯の笑みをこぼしていた。
そんなマスターにやにわに聞いてみた。
「マスターはどうしてこっちの世界にきたの」
「ご想像にお任せしますよ」
ふっと笑って答えをはぐらかされた。別に知りたいわけでもなかったがマスターはあまりにも謎が多すぎてたまに疑心暗鬼になる。
シティの住人はすべからくわけありだ。私ももちろんそうだし、ジェラルトンもフォリアも、そしてルーファやローレルもそうだ。自分からそれを話すことなんてしない。それが弱みになって漬け込まれるからだ。たとえ仲間だとしても。
それが私たちの日常だ。
「リリィ様、いい情報と悪い情報がございますがどちらからお聞きになりますか?」
「急にどうしたの。どっちでもいいけど、ならいい情報で」
マスターはグラスを拭く手を止めて「かしこまりました」と改まった口調でいった。
「日本にいる可能性が高い“ブラックリスト”の名前がわかりました」
その瞬間、私の心臓が張り裂けんばかりに鼓動した。自分の耳で聞こえるほど忙しなく動いてる心臓は止まる気配はない。心なしか私の息も不規則に変化している。
マスターは話を続けた。
「その名前は“エイフィドゥ”、主にアジアで活動しているテロリストです。ローレルがアメリカでの任務中にリークした情報です。性別や年齢は不明ですが」
エイフィドゥ。これまで“ブラックリスト”にかかわる情報を見てきたが、名前を知れたのは今回が初めてだ。あれほど用心深く、拠点が点々としていて証拠も残さない。そんなやつらがようやく尻尾の先端を見せた。
私の目は見開いているがなにかを見るわけでなく、焦点のあっていない目はカウンターの奥を向いていた。
マスターが「大丈夫ですか」と声をかけてようやく正気に戻る。レモネードをひと飲みして冷静なった頭で情報を整理する。
このエイフィドゥというやつがあの高校にいるとは限らない。しかしうまくいけば“ブラックリスト”を引きずり出せるかもしれない。
これまで盗聴やGPSによる情報収集で慎重に任務を前進させてきたが、正直決定打にかけると思っていた。下手な演技や嘘の情報はすぐにバレてしまうから
まさにこの情報は棚からぼたもちだ。無駄にしないように作戦を練らねばならない。
「ローレルは今どこ。直接話が聞きたい」
「実は……」
するとさっきまでにこやかだったマスターの顔が急に暗くなった。不自然にグラスとナプキンを持って拭き始め、しばらくしてからトーンを落として話をした。
「ローレル様は死にました」
「あっそ、ならいい」
“ブラックリスト”の名前だけ知れたからまあいいか。
「動じないのですね。あんなに親しくしていらしたのに」
「別に。向こうがくっついてきてただけだし」
ローレルは私と同じ“スナイプ”が暗殺系統だ。シティの人とは思えないほどお人好しで、いつもヘラヘラして他の仲間にも平たく接していた。私が最年少ということもあって、お節介は日常茶飯事だった。だから正直いって鬱陶しかった。いくらシティの先輩だからといって馴れ合いはしたくない。
ローレルの暗殺の腕は組織でもトップクラスだった。火薬の調合もあいつのアドバイスのおかげで上達したのも事実。しかし殺る殺られるなんてそれこそ日常で、感情もなにもないし興味もない。
ドライマンゴーを口に入れてその甘さを感じていた。
「甘すぎる」
マスターはレコードを取り替えた。それはローレルが好き好んで聞いていたカントリー調の音楽。渋い大人のバーが一気に西部の酒場と化した。あいつと飲んでいる風景が昨日のことのように思い出される。ちょうど私の左隣に座っている陽気なおじさんが。いや、お兄さん、とよばないとあいつは怒るんだったな。
マスターはショットグラスを取り出してバーボンを注いだ。その
「私もほしい」
「おそらく近々、招集があると思うのでそのときまでご辛抱を」
マスターはそういうとショットグラスを前に突き出した。私もそれにあわせてグラスを持つ。
「ローレルに」
「ローレルに」
“カンッ”
グラスの響きが店内に広がる。あのとき、三人でやったように。
* * *
「かんぱーい!」
三人の声が公園内に響く。今日は天気がよくて気温もちょうどいい。まさにお花見日和だ。
すみれと海を連れて近所の公園にやってきた。俺のバイトやすみれの部活の関係でだいぶ遅くなっちゃって、桜のシーズンはとうに過ぎていた。今見れているのはパラパラと残花しているやつだけだ。
それでもすみれと海は楽しそうに桜を眺めていた。
「見てみて!コップに花びらが入ったよ」
海が宝物を見せるように澄んだ声で喜んでいる。こうやって花見をするのは初めてではないのに俺もなんだか気分が浮かれる。
今日の朝から海が頑張って早起きをして、お弁当作りを手伝ってくれた。おにぎり、アスパラのベーコン巻き、卵焼き、唐揚げ、タコさんウインナーなど色とりどりの食材を使ってお
これだけあればすみれも満足するだろう。
「おいしい! 海ちゃん料理の腕あがったねぇ。これはいいお嫁さんになるよ」
「えへへそうでしょ。ほらすみれ姉これも食べて、私の自信作なんだ」
料理を作るのが好きな海と食べるのが好きなすみれは相性抜群で、彼女らは花より団子を具現化したみたいな存在だった。
おにぎり片手に“花”を眺めていた。これが本当の花見ってね。
風が吹いて木々が揺れる。桜の花びらが
「気持ちいいねぇ」
まったりとした時間の流れに身を任せる。普段の学校やバイトなど普遍的な日常のことは忘れてのびのびとしよう。
「そうだねぇ、ここで昼寝したいくらいさ」
「あ、昼寝といえば……この前空ったらね、ホームルームから授業が終わるまで寝てたことがあって……」
「お兄ちゃんが!?」
飲んでいたコーラを吹き出してむせてしまった。すみれは小悪魔のような笑顔を見せて引き続き話をする。新学期からあったことを振り返るように海に聞かせた。
海は純粋な笑い声を出して嬉しそうにしていた。俺がなにかやらかした話をするたびに「お兄ちゃんお疲れだねぇ」とか「すみれ姉ナイス!」など、すみれを
「お兄ちゃん顔赤いよ?」
「さ、桜のせいだよ……」
苦し紛れのいいわけにすみれと海は顔を見あわせて、花を咲かせた。そんなふたりを見て俺もつられて笑みをこぼす。
休日とはいえ、桜のシーズンが過ぎたため俺ら以外の人はいない。この広大な公園が貸切状態だ。お弁当を綺麗に食べた俺らは腹ごなしにバドミントンをすることにした。
「いっくよー! それ!」
ホームセンターで売っているプラスチックの羽根が俺目がけて飛んできた。これまたホームセンターで売っている安いラケットで打ち返した。しかし羽根は空高く飛んでいった。
「海ちゃん! いけるよ」
「うん!」
大きく振りかぶった海は下に叩き込むように鋭いスマッシュを決めた。なんとかして拾おうとラケットを伸ばすが間にあわず、砂煙をあげて羽根が止まった。
すみれと海はハイタッチをして喜んだ。
「次お兄ちゃんがサーブね」
ラケットで羽根をすくおうとしたがうまくいかなくて、すみれに「早くしてー」とせかされてしまった。真ん中に木の棒で描かれた簡易的な境界線を越えるように俺は下からサーブする。
こうやって運動するのは体育以外でいつぶりだろう。久々にする遊びのスポーツに俺の心は燃えてきた。
海が打ち返して俺がとり、後ろに飛んでいった羽根をすみれが打ち返す。すみれはさすがというフットワークであふれ球を拾っていく。球技やっている人はほかの競技も上手なんだなと実感した。
思いのほかラリーが続き、俺が疲れたところに海がまたスマッシュを決める。俺は膝に手をついて息を荒くしていたが、相変わらず若いふたりは飛び跳ねている。
今まで気づかなかったけど、海は運動もできるんだな。もしかしたらバスケやテニス、サッカーなどやらせたら才能が開花していたかも知れない。高校には入ったら海には好きな部活をやってほしい、そう思うのは兄のエゴなのかな。
「海ちゃんすごいね。高校入ったらなにか部活するの?」
「しないよ。うち料理好きだから飲食のバイトするんだ。そうしたらお兄ちゃんの負担も減るし一石二鳥でしょ」
すみれの質問に即答した海は、ラケットを後ろにやってあふれんばかりの純粋を撒き散らしていた。多分だけどその気遣いを気遣いとも思っていない。だれに
「それに運動ならお兄ちゃんとすみれ姉が付き合ってくれるしね」
「で、できた子やぁ」
俺じゃなくなぜかすみれが感動して海を抱きしめた。実の妹のように頭をなでなでしている姿は微笑ましく、ポケットに入れていたスマホで写真を撮った。あとで母さんに見せよう。
「すみれ姉くすぐったいよぉ。ほら、続きやろう」
ぐすんっと涙を引っ込めたすみれが「そうだね」と意気込んだのをきっかけに俺も地面に落ちている羽根を拾った。そして俺からサーブ打つ瞬間に海がぽろっと言葉を漏らした。
「そういえば、お兄ちゃんたちって付き合って何年目だっけ?」
その発言に俺らの心臓は爆発寸前だった。
「あ、あれどうしたのふたりとも……」
「えぇぇいやぁぁなんでもないよ? うんうん。てかあたしら付き合ってない……し?」
すみれは体をくねくねさせて俺のほうをチラチラと見てきた。話しているさいちゅうもガットをいじくって言葉を詰まらせていた。
「え! そうだったの! うちてっきりそうなのかと」
「ないない。すみれと俺が……」
“バシュッ!!”
突如
ポケットから予備の羽根をもうひとつ取り出すと無言で振りかぶり全力でスマッシュしてきた。
「あっぶなっ!」
ほぼ反射で跳ね返して羽根は弱々しくすみれのほうへ戻っていく。羽根は手前に落ちてそのまま地面に着くんじゃないかと思いきや、すみれが高速移動して右腕を自分の体の限界まで巻きつけて、下から俺の顔面目がけてバックハンドで打ち込んできた。もうどうすることもできなくてラケットを顔面にセットしてただひたすらすみれの
「あれ……これうち、余計なこといったっぽいね……」
すみれのひとりバトミントンを側から見てる海と、そのサンドバックになっている俺。
「あんたなんかに私の気持ちなんてわかるわけないでしょうね!!」
「どうしたんだよいきなり!」
「どうせストレートロングの金髪でハーフのクール系女子が好きなんでしょ!」
「え、お兄ちゃんそうなの」
海の純粋な問いがかえって胸に刺さる。いくら
「空の……」
すみれはジャンプをして空中で振りかぶった。太陽に照らされたその光景は美しいとまで思えた。そしてタイミングを見計らって渾身の一撃をくりだす。
「バカァァァァ!!!!」
放たれた羽根は空気を切り裂き、真っ直ぐ俺の脳天を目がけて飛んできた。構えようとしたが間にあわない。次の瞬間、俺の頭にクリーンヒットした。意識が……遠く……。
「あ、やば……やり過ぎた。空大丈夫?」
目を眩ませて頭の上にお星様をロータリーさせていた。
「すみれ姉とりあえず木陰に移そう」
「うん……」
『ねぇ空、こっちで一緒にお砂遊びしよ』
『ジャジャーン、ねぇ見てみて! 制服似合ってるかな?』
『二一八番……あ! あったよ! これで一緒の学校に通えるね』
『空、ねぇ空ってば——』
目を開けば木漏れ陽が満天の星々のように輝いていた。
「あ、お兄ちゃん起きた」
そこはさっきご飯を食べた場所で俺は仰向けに寝かされていた。横に目をやると体育座りで落ち込んでいるすみれがいた。
「さっきはごめん……やり過ぎた」
顔はそっぽ向いたまま少しぎこちなく謝ってきた。その姿はおよそ高校生に見えなくて、やんちゃで素直な幼馴染みの幼いころと同じだった。
手を伸ばしてすみれの頭に置く。昔からの仲直りの方法だ。
「気にしてないよ。それより喉渇いたでしょ。お茶持ってきてるから一緒に飲もう」
俺とすみれの間に
◯
日が暮れてきたので俺たちは帰宅した、はずなのにすみれがうちにいる。
「お弁当作ってもらったし、これくらいさせて」
そういって腕をまくってフライパンを見せびらかすように掲げていた。冷蔵庫を開けて夕飯をなににするか吟味している。
海は喜んでいるが、ちょっと心配なんだけど。すみれが料理をしてるところなんて幼馴染みの俺ですら見たことがない。学校の調理実習のときだって、包丁の持ち方から
「あれ、油って引くんだっけ?」
カンカン、ドンドン、ベチャ。俺の聞き慣れない音が聞こえてくる。そんな不協和音のせいで俺はソワソワしてしまう。
海に耳打ちして手伝うように促してみたけど、「大丈夫だよ」と澄んだ声でいわれた。海の自信はどこからやってくるんだか皆目見当がつかない。
じっとしていても落ち着くわけもなく、最近掃除した床を掃除し始めた。ついでにリビングの片付けもした。ほかのことをやっていても無意識にキッチンのほうを見てしまう。どうかなにごともないでくれ。
「できた!!」
俺と海は声の主のところへ駆け寄る。それは知っている料理なのか、異臭はしないか、見た目はどうだ、モザイクは必要なのか。
すみれはテーブルにそのブツを置いた。
「ちゃ、チャーハン?」
テーブルの真ん中には大きな器に入れられたチャーハンと三人分の取り皿、それとレンゲが用意されていた。その見た目はとても普通で匂いも美味しそうだった。
すみれはよそうためのお玉を持って、それをマイクに見立てて俺に取材した。
「まさに
上機嫌のすみれは俺の答えを聞くまえにしゃべりだしてひとり芝居をしている。お玉を持ったままテーブルの周りを回って、道ゆく人にインタビューをする、ふりをする。海もノリに乗ってきたのか、道ゆく人ABCDの役を声色を変えて演じている。この三文芝居はいつまで続くのやら。
いつ見てもふたりは本当の姉妹みたいだ。外は暗くなり始めているのに、家の中が徐々に明るくなっていく。こんな気持ちになるのはいつぶりだろう。
そろそろお腹も減ってきたし、せっかく作ったチャーハンが冷めるといけないので、手を叩いてふたりを席につかせた。
「スキャンダルの臭いが……!」
「まだやってたのかよ」
久々に三人でご飯を食べた。すみれと夕飯を食べるのも久々だったが、そもそもふたりしかいないし、バイトでいつも遅いからこの雰囲気がなんだか懐かしく感じる。
「どう? おいしい?」
「これは驚いたな……すみれがこんなおいしいの作るなんて」
「えへへ、やった♪」
すみれの作ったチャーハンはただのチャーハンではなくて、キムチを混ぜたキムチチャーハン。具材は卵とウインナーを使ったらしい。おそらく昼の残りだろう。
もちろん、お店で出るようなパラパラしたやつではなく水分が残っていて、べちゃっとしている。しかしウインナーや市販キムチの味、そしてべちゃっとした食感が家庭的な味を作り出している。昔、父さんが作ってくれたあのチャーハンと同じ不器用な味だった。
海もそう思ったらしく、普段よりも食べるペースがあがっていた。海に認められたのなら文句はないな。
「そういえば、うちでご飯食べちゃって大丈夫なの? おばさん困らない?」
「空の家で食べるってもう連絡してあるから大丈夫よ。なんなら泊まっていいわよっていわれた」
「え! すみれ姉今日うちにお泊まり?」
俺の向かい側でふたりはキャッキャと女子をしていた。てか、一応家主は俺なんだけど……。
置いていかれる俺があまりノリ気出ないのが顔に出ていたらしく、海が上目遣いで「お兄ちゃん、ダメかな?」といってきた。それに対して即答で「いいよ」といった。
「わーい! すみれ姉とお泊まりなんて久しぶりだね。ねぇねぇ、一緒にお風呂入ろ」
「いいねぇ! あ、じゃあ空も一緒に入る?」
「入るわけないだろ。うちの風呂そんなに大きくないし」
いつもの冗談を流すとすみれは無邪気な笑い方で肩をすくめた。
そのあとも三人で頬が疲れるほど笑い、心もお腹も満たした。学校に行けばすみれとご飯を食べるけど、今日はそれとは違う特別な感覚がする。すみれはどこに行ったってなにをしててもやんちゃで純粋な子なのは変わらない。しかし今日に限って、特に今この目の前にいるすみれがただの幼馴染みには見えなかった。
レンゲを持って口に運ぶとき、ボブの髪の毛を耳に引っかける。何本か引っかからずにぽろっと前に戻ってくる。俺は無性にそれを見つめていたかった。
「どうしたのよ空」
「な、なんでもないよ。ところで海は高校どこ行くか決めた?」
気まずさを唐突に海に押しつけた。
びっくりした様子の海は顔を赤らめ、口をもぐもぐさせながら「ちょっと待ってね」と手のひらを見せた。そしてごっくんと飲み込むと考え込むように話し始めた。
「一応決まってはいるけど、学力テスト次第かな」
「海ちゃん頭いいもんね。どっかのだれかさんとは違って」
こっちをチラリと見るすみれの口はニヤリといびつに広がっていた。海が頭いいのは認めるけどすみれにいわれるのはなんだか納得いかない。毎回赤点ギリギリで泣きついてくるのはどこのだれだよ
海は水をゴクリと飲んで、腰の折れた話を元に戻した。
「合格が決まったら教えるから楽しみにしててね」
「そ、そんなに先なのか……」
海は「ふふふ」っと透き通った声で目を細めた。
大事な妹の進路が気になったり、取るに足らない話をしたくなる。学校のこと、友達のこと、彼氏のこと。あまり踏み込むと怒られそうで聞くに聞けない。父さんもこんな感じだったのかな。
食事も終わり、次はお風呂に入ることにした。すみれと海に先に入ってきなと勧めるが「長くなるから先入って」といわれた。仕方ないし先に入ってパパッと済ませよう。
数分であがり、今はすみれと海がお風呂に入っている。俺は洗い物をしながら今日を振り返っていた。
予定を組む段階で全然空きがなく、このままでは口約束になってしまうと心配だった。それ以外にも桜の開花時期や天候など不安要素があって、期待なドキドキと懸念のソワソワで毎日忙しなかった。
それも
残りの洗い物をちゃっちゃと終わらせ、リビングでくつろぐために冷蔵庫から飲み物を取り出す。
“学生のいじめが深刻化しているようです”
“こ、ここはどこだ……キャサリン! どこにる!!”
“それってあなたの感想ですよね?”
“あれ……あ、海苔巻きか。ってなんでやねん!”
ペットボトル片手にリモコンを持ってテレビを操作する。特に見たいものがないなぁ。チャンネル切り替えの下のほうを無心で連打した。
「あ、タコワサボーイズじゃん。最近よくテレビ出てるよね」
パッと後ろを振り向くと腰を曲げてソファの背もたれに腕を乗せているすみれがいた。
「びっくりしたぁ……もうあがったのか」
俺の貸したシャツがダボダボで首元が大きく開いているせいで、うっかり見えてしまいそう。
すみれの髪の毛はまだ湿っていて何本かの束にまとまっている。肌もしっとりして部分的に赤く火照っているのが熟れた桃のように見えた。そしてほのかに香るシャンプーの匂いが嗅覚を刺激し、俺もまた火照ってしまった。
「空、そのペットボトルちょうだい」
ペットボトルを受け取ると、腰に手を当てていい飲みっぷりを見せた。飲み切ったあと「ぷはぁ」と息を漏らすのはお決まりで、見てて清々しいほどテンプレに遠慮がない。
「お風呂あがったよーお兄ちゃん」
遅れて脱衣所から海が出てきた。ドライヤーで髪を乾かしたらしく、ロングの髪はふんわりとしている。普段ツインテールにしているから、兄である俺でもおろした姿はなんだか別人に見える。
全員揃ったことだし“あれ”を持ってこよう。ん? ふとすみれの髪の毛をまた見る。
「すみれ、髪乾かしたほうがいいんじゃない? 風邪ひくよ」
「あーあたし髪短いしすぐ乾くよ。それにここ数年間風邪ひいてないし」
両手を腰に当て鼻を高くしているすみれにため息をつく。すみれに近寄って首にかかっているタオルを頭にかぶせた。
「俺が心配なんだ。拭かせてもらうよ」
「う、うん……」
火照りが残っているすみれを椅子に座らせて痛くないように優しく拭いた。すみれは膝を閉じてじっとしている。年中うんたらかんたらしゃべるのに今はまるでお人形さんみたいだ。
「痛くない?」
「うん」
「お兄ちゃん、ドライヤー持ってきたよ」
海は延長コードを繋いで俺にドライヤーを届けてくれた。タオルを取って自分の首にかける。そのときもすみれはうつむいていたままだった。
「すみれ、もしかして嫌だった? それなら無理はいわないけど」
「そ、そうじゃなくて……そ、その……空にやってもらいたいの」
体をモジモジと捻らせ目線は斜め下を向きたどたどしく口を開いた。すみれが嫌じゃなければそれでいいんだけど、どうしてさっきからこっちを見ないんだろう。
すみれの髪の毛は触れた瞬間わかるほど艶やかで日頃から手入れをしているのが垣間見れる。やっぱり女の子なんだな。
「これでよしっと。お疲れさま」
「ありがと……」
ポンと頭に触れてドライヤーを片付ける。
すみれは髪の毛を指先でつまみ口元に持ってくる。
「よかったねすみれ姉」
「な、なにが!?」
すみれの髪も乾かし終わり、さっき取りに行こうとした“あれ”を改めて取ってくる。すみれと海は髪の毛を触りあって「ふわふわだねぇ」とまったりな時間を過ごしていた。
銭湯のお風呂あがりには牛乳が鉄板だが、これもそのレパートリーに含まれるだろう。
冷凍庫から“あれ”を取り出してソファでくつろいでいるふたりの元に向かった。
「お待たせ、これ食べる人ー」
「アイスだ! はいはーいあたし食べる!」
「うちも!」
ひとりずつアイスとスプーンを手渡した。ソファに三人仲良く座ってフタを外す。キンキンに冷えたアイスから冷気が漏れている。そしてスプーンですくい取り、俺らは声をあわせていただきますをした。
口入れると固かったアイスも溶けて口いっぱいに広がる。火照った体は本能的に冷たい物と甘い物をほっしていたらしく、
「美味しいなぁ。それにこれってへーゲンガッツでしょ。わざわざ用意したの?」
「ご近所さんからもらったんだ。ちょうど三つだったから取っておいたんだ」
少し高めのアイスは普段食べないし特別感があって、俺らみたいな学生にはそれだけで十分な贅沢だった。終わりよければなんとやら、身も心も休まり満足した。
そのあとはテレビを見たりトランプをしたり、雑談に花を咲かせていた。時間はあっという間に過ぎていき、気がつけば二十二時半を指していた。海は大体この時間は寝ている。
「もうこんな時間か。すみれは今日どこで寝る?」
昔は床の間やリビングに布団をひいて寝ていたが、今は余分な布団はないし、だからといって母さんの部屋に寝かせるのもなんか違う気がする。せっかくきたんだし海と寝るのがいいと思う。海に対してそう提案したが、少し考えて断られてしまった。
「うちの部屋、今物多いしベット狭いし。ほら、あれだよ、うちもやりたいことあるし。お兄ちゃんの部屋なら問題ないよね」
なにか隠しごとがあるようにおどおどと話す海。彼氏か、彼氏と電話なのか!!
「俺の部屋か……すみれはどうする?」
「あ、あたし!? まあ別にいいけど」
そんなこんなで寝る場所が決まり、歯を磨いたあとすみれは俺の部屋にきた。
すみれがくるなんて想定していなく少しばかり物が散乱していた。すみれは「相変わらず質素な部屋だよね」と地味に刺さる言葉をいってベットに座った。
「男の子の部屋ってなんかポスターとかフィギュアとか置いてあるイメージ」
「俺はあまり詳しくないからなぁ。それにすみれ、ほかの男の部屋入ったことないでしょ」
「失礼ね、一回くらいあるわよ。親戚のおじさんの部屋とか……」
すみれらしい言葉が聞けてホッとした。
俺らは時計を眺めて時間感覚を共有する。日ごろからお互い遅くまで起きているようだ。明日のバイトは午後からだし、そうとわかればもう少しだけだっべっていよう。
俺は椅子に座って、すみれはベッドに寝そべりながら話をした。クラスのこと、最近あったこと、部活のこと。毎日学校で話をしているはずなのにすみれといると話題が尽きない。
「そういえば、こんな噂聞いたんだけど」
すみれの口調が少し変わり、重たく口を開いて話を続ける。
「里中さんいるでしょ。なんか夜街に出て男をたぶらかしてるんだって。それにバーにも行ってるらしいよ」
すみれの話に驚きを隠せなかった。それと同時に疑念も感じていた。内容が内容なだけあって
しかし転校してきて数日が経っても里中さんのことはまったくといっていいほど知らない。もしかしたらって思っているのは俺も外見で考えているからかもしれない。
「ねぇ空。あの子のことどう思う?」
「どうってどういうこと?」
質問に質問で返すとすみれはかけ布団を抱き寄せて少し目線を逸らした。それは俺がすみれの髪を乾かしているときと同じ目だった。
しばらく考え込むようにうなだれて思いついた言葉を暫定的に出した。
「なんていうのかな……里中さんって掴みどころがないじゃん。イギリスからきたってのもあるかもしれないけど、正直関わりにくいっていうか関わらせてくれないっていうか」
ぽつりぽつりとすみれなりに形にしていく。たまに矛盾したり言葉がおかしいけどいいたいことは大体わかった。
結局のところ里中さんと関わりにくいってことなのだろう。よくいえばクール、悪くいえば無口。聞いたこと以上は答えてくれないし、自分からなにかを話しているのは見たことがない。
「慣れない環境だろうし、無理もないんじゃないかな」
俺だって仲良くなりたい。しかしどうすればいいのかわからない。それどころか少し避けられている気がする。
噂うんぬん考えなくても謎が多い彼女でつい妄想してしまう。そう思っているのは俺だけじゃないはず。
「そっか……。ねぇ空、里中さんのことどう思ってる?」
「え、さっきいったけど」
「そうじゃなくて……」
するとベッドから起きあがり俺の前に仁王立ちした。強く握られている拳、赤い頬、泣きそうな目。
意を決したすみれは大きく息を吸って言葉を吐き出した。
「里中さんのこと好きかどうかってことよ!」
すみれの真剣なものいいに呆気に取られてしまった。今にも崩れそうなほどひどく怯えている。俺は、俺は……。
素直な気持ちを伝えたら傷つくだろうか。曖昧に答えたら嫌われるだろうか。そんな目で俺を見ないでくれ。まるで俺が泣かせたみたいじゃないか。
静寂に包まれた部屋に一本の花が咲いている。その周りにはなにもなくただひとり寂しく佇んでいた。どんな言葉をかけても花びらを散らしてしまいそう。しかし現在進行形で葉は
すっと立ちあがりすみれと向きあう。
「好きじゃないよ。確かに美人だし勉強もできてとても魅力的なんだけど、それは恋心とは違う気がする。なんて、俺は今まで彼女いなかったからわからないけどね」
素直に話した。頭で思いついた言葉をめかし込まずにそのまま伝えた。怒っただろうか。
「……ありがとう。私実はね……」
そういうと重たい顔を持ちあげた。針の穴に通すような真剣な眼差しを俺に向ける。やんちゃ娘でも女子高生でも幼馴染みでもなかった。ひとりの女としてここにいるんだと感じた。
すみれがニヤリと笑い、せきを切ったように話し始めた。
「いやークラスの男子数人が里中さんのこと好きって噂聞いちゃったから空くんはどうなのかなって思ってさ。あはは、だよね。空が恋心なんてないない」
さっきまでの神妙な面持ちが嘘のようで、口に手を当てて笑っている。俺の肩に手を乗せて、「うん、さすが空くんだよ」とバカにされた。
「え、それだけ?」
「なによそれだけって。噂によるとあのサッカー部の……だれだっけ。まあいいか、その人がデート誘おうとしたんだってさ」
またいつもの雑談に戻ったけど、少々ぎこちないすみれが気がかりで、すみれのペースに置いていかれる。すみれは満面の笑みでベッドに転がり込み、ひたすらに話しをする。
唐突に「眠たいなぁ」といって大きなあくびをした。どこまでも自由人でマイペースな彼女に振り回されながらも、それで安心してしまい心地よくも思えてしまう。かりに俺らが結婚したら、絶対に尻にしかれる。
「もう遅いしそろそろ寝ようか。じゃあ俺は床で……」
「一緒に寝ようよ。昔よくしたでしょ」
すみれにせがまれてしまい、仕方なく俺らは一緒のベッドで寝た。パチンッと電気を消してすみれが寝ている横に体を寝かせる。暗くてあまりよく見えない。すみれは「懐かしいね」といったっきり言葉を発さなくなった。その代わりに小さな吐息が俺の背中をさする。
小さいころから聞いてきたこの寝息はどの睡眠薬よりも効果がある。俺も釣られてうとうとしてきた。
「そ……ら……」
少しはだけている幼馴染みの体にかけ布団を優しくかけた。暗くてあまりよく見えない。それでも確かに小さな吐息が俺の顔に当たっている。
俺も次第に眠りに落ちていった。
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