▄︻┻┳═一 プロローグ ≫
春というのは気分も高まる季節だが、この街はどうも違うらしい。人々は足早にどこかへ向かうが、
それはまるで咲くに咲けない老いた桜のようで、
“
世の中には決して交わってはいけない者同士であふれている。空と海、生と死、そして表と裏。近づけば向こうも近づき、離れれば向こうも離れる。それに気づかず踏み込んでしまえば
この街は都会とよばれ世界的にも
満足してない現状にいらだちを感じているだけで、別にだれが悪いというわけではない。そんなことはよくわかっている。しかし頭が感情に追いつかず、結局これじゃあ責任転換と変わらない。
気分転換に散歩をするにも、人で賑わうこの街はうるさ過ぎる。だから“僕”は今日もイヤホンをつけて、名前も歌詞の意味も知らない洋楽に耳をあずける。
変化を嫌うこの街では感情を持つ人間よりも、ロボットや機械のほうがお似合いかもしれない。だからこそ学生時代の思い出が美化されて記憶に残る。
そうそれはちょうど老桜が咲き倦ねたあのころ——
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