第133話 結末。
「【
「ガがグオウアアあアアァぁァッッっ!? おノレェェェぇェッっ! ノエるゥゥぅッッっ! レイスゥぅッッっっ!」
深く【光】の刃を突き立てると同時に黒刀を手放し、僕は一気に後ろに跳んだ。
この量の魔力爆発……! 余波は確実に僕まで飛んでくる……! 一歩でも遠くへ離脱しないと……!
「ノエ……ル! う……う、ううぅ……!」
連続で何度も後ろへ跳ぶ僕をロココが伸ばした赤い呪紋がつかんだ。そのまま息も絶え絶えになりながらも、ロココは呪紋に強く魔力をこめ、僕を後ろに引っぱる。
「………………!」
核を貫かれた女王がなにかを叫び、なにかが高速で後ろへ引っぱられる僕を逆に追いぬいたその瞬間、まばゆく輝く青い【光】がグランディル山の頂のすべてを呑みこんだ。
「――
その視界も音もすべて奪うほどの【光】の奔流が止んだあと。
「はあ……! はあ……! はあ……! なんとか……もった……か……!」
「ニーべ……!」
まだ青い残光の残る薄ぼけた視界の中で最初に気づいたのは、守るように僕の前に立つ人影。その身にまとう青い霊火をすべて燃やしつくし、ひざをおさえ荒い息をつくニーべリージュの姿。
「ノエ……ル……!」
「ノエル……! あたし、たち……! ついに……やったんだね……!」
「ロココ……! ディシー……!」
次いで、僕の後ろから、お互いの肩を抱きながらやってくる、精も根も尽きはてたといった様子のロココとディシー。
少し遠くには、完全に張りつめていた糸が切れたのか、地面にぺたんと座りこむ
「ああ……! 僕たちみんなでつかんだ勝――」
『まさか。こんな結末を迎えるなんて、本当に思いもしなかったわ』
――聞こえてきたその声に反射的に振り返り、その場の全員が息を飲んだ。
青い残光の晴れた中、その中心にたたずむのは、聖女を模した真っ白な姿。そう。【死霊聖魔女王】〝玩弄〟のネクロディギス・マリーア。
「そん……な……! う、うそ……だよ……!?」
「ロココ! ディシー! 下がれ! ここは私が!」
「ううん、ニーべ……! ロココも、やる……!」
「ロ、ロココちゃん……! う、うん……! あ、あたしも、怖いけど……でも……! やってみせるよ……!」
気圧されていたのは、ほんの一瞬だった。
そして、黒刀の鞘を手に、僕はまっすぐに突きつけた。
「【死霊聖魔女王】! まさか、あれに耐えきるなんて思わなかった……! でも、僕たちは負けない……! 絶対にあきらめない……! お前を倒すまで、何度だって僕たちの希望を、【光】を積み上げてやる……!」
『うふふ。盛り上がっているところ悪いのだけれど、もうそういう無駄なことはやめてくださるかしら?』
【死霊聖魔女王】がその真っ白な左手を億劫そうに軽く振る。
「「「「無駄かどうかは――!」」」」
『せっかく残されたわずかな魔力をふりしぼって、こうして貴方たちとの対話の時間を設けたのだから』
自嘲めいた笑みを浮かべる【死霊聖魔女王】の左手の指先が数本、ぼろぼろと砂のように崩れ落ちた。
「【死霊聖魔女王】……?」
『うふふ。これでわかったでしょう? おめでとう。貴方たちの勝ちよ。わたくしには、もうなにかひとつとして成す力も残っていない。存在はまもなくして滅び、魔力としてこの世界へと還るわ。ただその前に』
【死霊聖魔女王】はそこでゆっくりと首を傾げ、その真っ白に艶めく唇に弧を描く。
『互いの
それは、僕がいままで女王に見た表情の中で、もっとも人間らしさを感じる笑みだった。
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