第92話 だれもとなりに立てはしない。でも。※別視点
「僕たちといっしょに――【
まっすぐに私の目を見て告げられた言葉。
あのとき、冒険者ギルドで聞いたときは微塵も心動かされなかったその言葉に、いま私の胸は、心は、激しくかきむしられ、揺さぶられる。
それはきっと、彼らをまぶしいと思ってしまったから。
ただ独り戦い続ける私と違い、心からの絆と信頼で結びついた仲間とともに戦う彼らをまぶしいと――うらやましいと、焦がれてしまった。
「ノエル……。君は、私のとなりに立って、戦えるというのか……?」
だから、思わず口を開いてしまっていた。聞いてしまっていた。
「いや、それはできないよ。ニーベリージュ。僕たちのだれも、あなたのとなりに立てはしない」
……私の望む答えが返ってくることはないと知りながら。
首を振るノエルに、私はぐっと唇を噛みしめる。
「ならば、なぜ……!」
「でも、いっしょに戦うことはできる」
ノエルの漆黒の瞳が強い意志をもって私を見つめた。
「あなたが前に立って敵をおさえてくれれば、僕がその死角をつくよ。ロココは遠くからでもあなたを援護できるし、ディシーはうしろから、魔法であなたがおさえた敵を吹き飛ばしてくれる」
そこでノエルはにっこりと、本当に楽しそうに、笑った。
「どう? ワクワクしてこないかな? ニーベリージュ。僕はね、これからの【
……いま、この子どもは――ノエルは、なんていった? 魔王に、届く? だれが、私……が? そんな、そんなの――!
「ぷっ……くくく! あはははははははは!」
もう堪えきれなかった。いつぶりかわからないくらいに心からおかしくなって、ここが戦場であることすらも一瞬忘れて、笑いころげてしまう。
「くっ……ふふ! なるほど……! たしかにそれができるなら、私たちは本当の【英雄】だな……!」
私の胸に、火がともる。この【
……ああ。いまがそのときだ!
「
装着者である私の命に応え、全身を包む【
そして――
「父さま、母さま、兄さま……! 祖先よ、始祖よ……! 彼らとともに戦い朽ち果てた
――いままでその鎧の中で私の生命維持のための燃料として消費されてきた、蓄積し内在されてきた【
青き霊火として目に見える形で外に解き放ち、全身にまとう。
……これでもう、選択肢はない。
家宝たる【
「ニーベ。これ」
「これは……拾ってくれたのか。君は……ロココ、だったな。ありがとう」
「うん」
『マタシテモォォォォォッ! ナニヲゴチャゴチャトヤッテイルゥゥゥゥッ! 女ァァァァッ! 人間ノ分際デ、少々ノ死霊【
「貴様のまとう、哀れで惨めな黒き死霊どもなどといっしょにしないでもらおうか! 【
右手に
「私がまとうのは英霊! 味方と敵、それぞれに立場は違えども、自らの信じるもののために、愛するもののために戦い殉じた、【
そして、その切っ先を突きつけ、私は宣言した。
敵と――そして、自らの過去と、未来に。
「いまよりは【
止まっていた私の時が、鼓動が――いま動きだした。
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