第78話 凶報。

『はああっ!』


 亜空間収納からとりだした身の丈ほどもある黒い槍斧ハルバードを二―ベリージュが振るい、気合とともに空中に放り投げたぎっしりと中身のつまった5つの大きな袋を一気に切り裂く。



「「「きゃああああああぁぁぁっ!?」」」


「「「うわああああああぁぁぁっ!?」」」



 直後、穏やかな冒険者ギルドの午後の光景が一変した。


 切り裂かれたその袋から降ってきたものを見て、ギルド中の人間が老若男女関係なしにいっせいに悲鳴を上げる。


 それは、折れた骨。それは、バラバラになった腐肉と臓物と腐った血。数百体ぶんはあろうかという魔物のそれが雨となってふりそそぎ、ギルドの床に向かって落ちる。


「「「いやああああぁぁぁっ!?」」」


「「「うぐおぉぉぉぇぇぇっ!?」」」


 数秒後、盛大にぶちまけられたそれによって、ギルド内は惨憺たるありさまとなった。立ちこめる腐った肉のにおいと、まるで殺戮のあとのような光景。ギルドの職員と冒険者が男女問わず悲鳴を上げ、えずき、バタバタと立ち上がり騒ぎだす。


「二、二―ベ……リージュ……さん……? な、なにを……? なにを……して……?」


 そんな中、フェアさんが涙目でカタカタと震えながら、それでもこの惨状をつくりだした元凶のニーベリージュに向けて声をかける。


 ニーベリージュは振るい終えた身の丈ほどもある黒い槍斧ハルバードをふたたび亜空間収納にしまいなおすと、こう口を開いた。


『すまない。百聞は一見にしかずというからな。事態は一刻を争うと考え、こうさせてもらった。この騒ぎの不始末は、いまぶちまけたこの素材と討伐報酬をすべてギルドに寄付することでどうか容赦してほしい』


「わ、わかり……ました……。って、え……? 一刻を争う……事態……?」


『ああ。フェア。難しいとは思うが、いまから話すことを落ち着いて聞いてほしい。場所はグランディガルド連邦。この街に一番近いガルデラ山の奥、ディーガレット山のふもと。そこからガルデラ山を出るまでのあいだ、私はこの数百体ぶんの魔物の素材を昨日一晩で戦って手に入れた』


「え……? 一晩……で……? 数百……体……? そ、それ……って……!? まさ……か……!?」


『ああ。まちがいない。【魔物大行軍スタンピード】だ。それも死霊系アンデッドの。つまり、このすぐ近くまで……【死霊魔王】が来ている』


 ――その凶報は、ギルド内の全員を一瞬で静まり返らせた。





♦♦♦♦♦


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