第65話 時間稼ぎ。
はは……! まさか、ディシーがあの【闇】属性最上位クラスの魔法使い【
『ビィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィッ!』
まぶしいくらいに照らされた、もはやリーダーもほとんどのメンバーも失い壊滅状態となった【
【
「じゃあ、はじめる。ディシー。痛いから、覚悟して」
「う、うん……! お願い! ロココちゃん!」
「うん。……潜り、
「ん、うんんんあぁっ!?」
そうこうしているあいだにも、僕の後ろではロココによるディシーにかけられた【
仕組みは簡単。ロココの呪紋をディシーの体内――魔力組成の奥深くまで侵入させて、その中に潜りこんだ異物を破壊するというもの。だがそのために受け入れなければならないロココの呪紋もディシーにとっては当然異物。それには体内の神経や血管を直接傷つけられるような想像を絶する苦痛が伴う。
……ちなみに解毒薬がなかったら、僕もこうしてあとでロココに解毒してもらうはずだった。
ちらりと後ろを見ると、ロココのまとう【
「んんんんんんんんうあぁっ!?」
その露わになった褐色の肌から伸びる無数の赤い呪紋が小柄なディシーの体をまるで覆うように全身に突き刺さっている。
『ビィィィィィィッ!』
「うわっ!? ……っと!」
間一髪。どうやら少し見惚れすぎたみたいだ。
【
どうやら細かな触手では僕を殺しきれないと踏んで、手段を変えてきたらし――!?
『ビィィィィィィィィィィィィィィィォォォォォォォッ!』
いや、違う!? まさか!? これって、禁断症状!?
『ビィィォォォォッ! ビィィォォォォゥゥッ!』
「くっ!?」
苦悶のような響きを上げて身を震わせながら、無数の触手、巨大な触腕を振り回し、怒涛のごとく押し寄せる【
その触手を両手の刀で斬り、触腕を避けながら、ロココとディシーのいる入り口には行かせまいと僕は必死に食い下がる。
「くううっ!?」
だが、それでもじりじりと確実に【
……しかたない! 予定より少し早いけど! 【隠形】!
「うおおおっ!」
『ビィィギャァァァァァッ!?』
一瞬だけ完全に気配を断ち、【
「そんなに飢えてるんなら、これでも食べてなよ!」
『ビィィギャァァァァォォォォッ!?』
左手に握っていた、毒がたっぷりと染みこんだ緑刀を体内に向けてたたきこんだ。
……よし! これであの刀に塗られた毒を分解しきるまでは、【
『ビィィギャァァォォァァァ!』
「くっ! うっ!」
痛みに
――本来、正面切って戦うのに向いていない暗殺者の僕がはたしてこの黒刀一本でどこまで持ちこたえられるか、かな……!
『ビィィギャァァォォ!』
咆哮にも似た響きとともに向かってくる触手と触腕に向けて、僕は黒刀をかまえ直した。
♦♦♦♦♦
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