第64話 冒険者になったのは。
「あ、あたしに……まかせてもらえないかな……!」
「え?」
「ロ、ロココちゃんに聞いたの! あたしにかけられた【
「ノエル。解毒と仕組みは同じだから、時間があればできると、思う」
……たしかに
「……いいの? ディシー。あのひとたちはディシーをだまして、その心につけこんで、ひどいことをしようとしたのに。そんなあのひとたちのために、ディシーは体を張れるの?」
僕のその問いに、ディシーは一度深く深くうつむいてから、やがて意を決したようにキッとまっすぐに僕の顔を見て、はっきりとこう言った。
「うん! だって、おばあちゃんがいなくなって、あたしが旅に出たのは、冒険者になったのは……ひとの役に立ちたかったからだから! もちろん、あたしを受け入れてくれる場所が欲しかったのは本当だけど……でも! それ以上に、ただひきこもってばかりいるんじゃなくて! あたしの力でだれかを助けたかったからだから……! だから、いくらひどいひとたちでもこのまま見殺しになんてできないよ!」
緑色の宝石のようなとても力強い瞳が僕を見つめていた。それは、あの夜のロココの青い月のような瞳を思わせるような自らの強い意志に満ちた、僕にとってとてもまぶしい輝きで――
「ディ、ディシーちゃああん……!」
――いつのまにかすぐ近くまで這ってきていた、まだ生きていたらしい【
その声を聞いて、ディシーはキッとリーダーの男をにらみつけた。
「うるさい! 気安く呼ぶな! このえっちでスケベでクズで甲斐性なしでぺらっぺらの最低男! ぜんぜん許してなんてないんだから! あたしをだまそうとしたことや、ルアさんたちみたいな女のひとにいままでひどいことをした罪は、絶対に償ってもらうんだからねっ!」
そのディシーの剣幕にリーダーの男を初めとする【
その中毒性から王国で禁止されている魔薬の密売に使用、監禁に人身売買まがいの所業。ほかにも多数の余罪がありそうだ。捕まったら、おそらく極刑はまぬがれないだろう。
でも、それとは関係なく、いまは。
「わかった。ディシー、君にまかせるよ。ロココ、ディシーをお願い」
「うん、わかった。ノエル」
「それから、そのための時間は僕が稼ぐよ」
『ビィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィッ!』
散らばった数多の
僕は右手に黒刀を、そして左手にさっき拾っておいた、すでにあの
「だからさ、期待してるよ? ディシーの見せてくれる
「うん! まかせて! ノエル! あ、でもひとつ訂正するね?」
分の悪い戦いにのぞむ自分を奮い立たせるために少しだけ軽口をたたいた僕に、ディシーが両こぶしを胸の前で握ってグッとうなずいてから、小首を傾げた。
「あたしは
――まるでなんでもないことのようにディシーはそう僕に言ってのけた。
♦♦♦♦♦
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