第42話 【六花の白妖精(フラウ・シルフィー)】

「それではお会計のほどを。ノエルさまがお買い上げになったロココさまの純白のケープマント――銘を【六花の白妖精フラウ・シルフィー】と申しますが、こちら100万リベになります」


「ひゃっ……!?」


 服飾店【戦乙女】のカウンター。


 すでに純白の薄手のケープマントに着替え終えてホクホク顔のロココを傍らに、なんでもないことのようにいい放たれた店長のサーシィさんのその宣告に、思わず僕は絶句する。


 う、嘘でしょ……!? ぶ、武器ならともかく、お、女の子の服ってこんなに高いの……!? それ、【大妖樹(ギガントトレント)】の核を売ったお金の半分じゃないか……!? い、いや……買うよ……!? 買うけど、でもさ……!?


「まあ、そうですよね。いきなり100万L出せ、なんて言われてもそれは納得できないでしょう。ですのでご説明いたします。この【六花の白妖精フラウ・シルフィー】の性能を」


 うろたえる僕の内心を見透かすかのように、キラリと眼鏡の奥の赤い瞳を光らせてサーシィさんは語り始めた。


「まず糸ですが、こちらは希少魔物【雪白蚕(スノウシルワーム)】から採取したものになります。ノエルさまもご存知かとは思いますが、この糸は【雪白糸(スノウシルク)】と呼ばれ、剛柔優れた性質を持つ超一級品です」


 ……うん。まあ100万Lもするんなら、それくらいはね。


「ちなみにその【雪白蚕(スノウシルワーム)】ですが冒険者時代にわたくしが生け捕りにして、ミルクちゃんと名前をつけて現在も店の裏で飼育中です。手のかかるコですが可愛いんですよ?」


 ……いや、それなんの話!? まちがいなくすごいんだけど、それ性能と全然関係ないよね!? あとシルクでミルクって名前がややこしいよ! 薄々気づいてたけどさ、話しかたが丁寧なだけでなかなかな性格してるよね! サーシィさん!


「お褒めにあずかり光栄です」


 ……いや、褒めてないよ!? っていうか、僕の心の声まで察するの本当やめて!?


「そして、その採取した【雪白糸(スノウシルク)】を――わたくしの属性【風】の魔力をこめながらひと針ひと針編みこんだものが、この【六花の白妖精フラウ・シルフィー】です」


 え? 魔力をこめた……って。 それって、つまり――え、永続強化素材!?


 なんでもないことのようにいい放たれたサーシィさんのそのひと言は、僕を絶句させるには十分だった。





♦♦♦♦♦


本作を面白いと思って頂けましたら、是非タイトルページで☆による評価、作品フォローや応援をお願いいたします!


読者様の応援が作者の活力、燃料です!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る