第34話 冒険者とパーティー登録。
「それでは、暗殺者ノエル・レイスと
「「こう? ――ひゃっ!?」」
受付嬢のフェアさんに言われたとおり、ふたり並んでひんやりとした大きな金属の板に手のひらを触れる。すると、途端に触れた場所から青白い光の線が走り、思わずふたりして同時に間の抜けた声を上げてしまう。
青白い光の線はそのままフェアさんの後ろを通ってギルドの奥へと向かって進み、数秒してやがてなにごともなかったかのように消え去った。
「はい。ごくろうさまでした。これで冒険者登録は終了です。以後、冒険者としてのふたりの身元は、先ほどのミスリルボードを通じて本部に登録したこの個人ごとの魔力情報を通じて冒険者ギルドが証明します。なんにしても――おめでとう! ノエルくん! ロココちゃん!」
「うん、ありがとう! フェアさん! これで僕とロココも晴れて正式な冒険者だよ!」
「ありがとう」
説明の最後にパッと花の咲くような笑顔で祝ってくれたフェアさんにつられて、僕とロココも微笑み喜びを表す。
正直、本当にうれしかった。【光】の勇者パーティーに所属していたころは、メンバーの中で僕だけは冒険者登録をしていなかったから。
パーティーの一員としての取り分もリーダーの勇者ブレンからの手渡しだったし。ロココみたいに不当に搾取されてたわけじゃなかったから、なんでこんな面倒なことをするんだろう? と当時は思っていたけど、いまならその理由がわかる。
ブレンは残したくなかったんだ。ギルドに記録を。パーティーメンバーとしてはもちろん、取引相手とですら、僕を。
正規の冒険者同士がなにか取引をする場合、ギルドを通じて記録を残すことが一般的だ。残さなかった場合、なにか後ろ暗いことがあるのでは? とギルドから疑われるくらいには。
だからこそ、ブレンは僕を正規の冒険者にしなかった。一切の記録を残さず存在ごとなかったことにできる、まさにブレンがいうところの、もっとも都合のいいつなぎとして使うために。
だから、こうして正規の冒険者になれて本当にうれしい。暗殺者の一族の実家を出てから一年以上、ようやくひとりの人間として立つことができた。いま、そう実感できた。それに。
「じゃあ続いてパーティー登録も行うのかな? ノエルくん、ロココちゃん?」
いつのまにか僕とロココに対する口調が自然に親しげなものに切り替わっていたフェアさん。特に悪い気もしないし、そのほうがもっと仲良くなれる気がしたので特に指摘はせずに僕は答えた。
「うん。お願いするよ、フェアさん。パーティー人数は僕とロココのふたり。本当はメンバーはもっと増やしたいけど。それでパーティー名は――」
そこでちらりととなりのロココにに目くばせし、ふたりで同時に宣言した。
「「――【
そう。いまの僕はひとりじゃない。大切な仲間がとなりにいる。【光】の勇者パーティーに都合のいいつなぎとしていたときとは違う、本当の絆で結ばれた大切な仲間が。
「【
「うん。お願い。でも、その前にひとつ確認なんだけどさ、フェアさん? 冒険者パーティー同士の争いに基本的にギルドは不介入だよね?」
「え? う、うん。私みたいなギルド職員に危害を加えたりしなかったら、基本的には……?」
「そうか。よかった。じゃあさフェアさん――」
「おいおいおい!? そこのイモくせぇ三つ編みの受付の姉ちゃんよぉ! まさかその劣等【闇】属性どもの言い分をそのまま信じようってのかぁ!?」
「――これからここで起きること全部、僕とロココを信じて、だまって見守っててくれるかな?」
すぐ後ろからかけられた野太い怒鳴り声。パーティー結成直後に降りかかった火の粉を払うべく、僕はくるりと振り返った。
『……ロココ。ちょっと頼める?』
となりのロココだけに聞こえるようにした【声】でぼそぼそとささやきながら。
♦♦♦♦♦
本作を面白いと思って頂けましたら、是非タイトルページで☆による評価、作品フォローや応援をお願いいたします!
読者様の応援が作者の活力、燃料です!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます