第30話 初めての夜。
「食べた……。もうおなかいっぱい……。こんなにおなかいっぱいなの、ロココはじめて……。しあわせ……」
「うん……。本当に僕もロココもよく食べたよね……。店員さんのおすすめだけあって、どれもすっごく美味しかったし……。僕もロココが満足してくれたなら、本当にうれしいよ……」
高級食事処のほどよく照らされた個室の中。
僕とロココはお互いの健闘をたたえ――もとい食事の感想を語りあう。
テーブルの上には空になった皿の山、山、山。本当にものすごい量だった。
スープだけでもコンソメ、オニオン、コーン、カボチャのポタージュ。メイン級ならステーキにカツ、シチュー、ムニエル、ポワレ。さらには麺類もトマトソース、魚介系、ハーブや香辛料を効かせたもの。
おまけにいろんな種類のパンの盛り合わせに米料理まで。本当にいまでも無事に完食できたのが信じられないくらいだ。
「失礼いたします。デザートをお持ちいたしました。こちら食後のコーヒーといっしょにお召し上がりください」
……うん。どうやらまだ終わっていなかったらしい。
「美味しかったね、ロココ」
「うん……。ノエル……」
食事を終えた僕たちは重いお腹をおさえつつその足で今夜泊まる宿を探し、どうにか一軒の宿に落ちついた。時間が遅かったから多少割高にはなったけど、まあ背に腹は代えられないから良しとしよう。
宿探しにけっこう時間がかかったから、もうすっかり夜も更けていた。僕の向かい側のベッドに腰かけるロココの目なんかもう完全にトロンとしてしまっている。
「ロココ。眠いんじゃない? もう今日は休みなよ。僕はもう少しだけ起きてるからさ」
「ううん、ノエル……。ロココも…………起き……、すぅ、すぅ……」
しゃべっている途中でベッドにこてんと寝っ転がるロココ。そのまま気持ち良さそうな規則正しい寝息を立て始める。
「はは。さすがに疲れたよね。今日は朝から本当にいろいろあったからなあ」
眠るロココにシーツをかけてあげながら、僕はそうひとりごちた。そして、ロココのとなりのベッドにごろんと寝っ転がる。
そう。本当にめまぐるしいくらいにいろいろとあった。【
「僕がパーティーを結成、か……」
【光】の勇者パーティーにいた昨日までは考えもしなかったことだ。でも、今の僕はもうはっきりと決めている。【闇】属性だからって理由だけで、本人の人格も実力も関係なしにいいように扱われ、蔑まれるようないまの世の中は絶対に間違っている。
だから、僕が、僕たち【輝く月ルミナス】が認めさせてやるんだ。
まだほかにもこの世界に必ずいるはずの実力があるのに不遇な境遇を強いられている闇属性の仲間を集めて、目に見える結果を、【光】の勇者パーティーと同じ偉業を――魔王を倒す。そうすればきっと世界は
ギシ……。
ん、なんだ……?
――かすかな気配と音に、浅い眠りから目を覚ます。
「ノエル……」
なんだ、ロココか。僕のとなりのベッドで寝てたはずだけど、目が覚めちゃったのかな?
「どうしたの、ロコ――!?」
ギシ……。
「いっしょに、寝ていい……?」
感じるのは、華奢な幼い体の重み。
薄闇の中、見上げる僕を潤んだ青い月のような瞳が見つめていた。
艶めく褐色の肌を隠す役目をほとんど果たさない、透けたように薄く、胸元だけで留められて股下まで大きく開かれた黒のナイトドレス一枚だけを身に着けた姿で。
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