第24話 英雄の誓い。
「本当にありがとうございました! ロココを洗ってもらっただけじゃなく、こんなにたくさんの服まで! 大事に着させていただきます!」
「……ありがとう。その、楽しかった」
「うふふ~。どういたしまして~」
「あはは! あたしたちも楽しかったわ!」
ロココを連れて入った高級娼館の一階の談話スペース。
帰り支度を整えた僕たちは、女主人のリスティさんとロココを洗ってくれた3人のお姉さんたちの見送りを受けていた。
いまロココが着ているのは袖のあるタイプの真っ白なミニドレス。最初に着ていたぼろぼろのマントと他にお姉さんたちからもらった服は、全部まとめて僕の亜空間収納に納めてある。
「僕、まさかこんなに親切にされるなんて思ってなくて……! だって僕たち【闇】属性なのに、少しも偏見の目で見られないのって本当に数えるほどで、だから、すっごくうれしかったです! あの、お茶もお菓子もごちそうさまでした!」
「うふふ~。そんなにかしこまられると照れちゃうわ~。前にも言ったと思うけど、娼館(ここ)は来るもの拒まず、分け隔てず、の場所だからね~。ただ、そうね~?」
リスティさんのおっとりとした瞳がすっと遠くを見るように細まった。
「やっぱり私たちも日陰の中で生きていかざるをえない人間だからかしらね……? だから、つい力になってあげたい、なんて思っちゃったのかも……な~んてっ!」
それから、ふっといたずらっぽく笑い、口もとをほころばせた。けれど、やっぱりその微笑みは僕にはどこかさびしそうに見えた。ロココに服をくれた3人のお姉さんたちと同じように。
だから、僕は。
「【
「え?」
「【
僕は真剣なまなざしでリスティさんを見つめる。
数秒後、ぽかんと固まっていたリスティさんは、
「そうなったら私、自慢しないとね? この娼館は、あのみんなが知ってる英雄を助けたお店なんですよ、って!」
そういって、楽しそうにくすくすと笑ってくれた。
「いいお店だったね、ロココ」
「うん、ノエル」
娼館をあとにしたときには、すでに日が暮れかけていた。なので、もう今日はロココの冒険用の衣装を見繕うのはあきらめて、夕食を食べに行くことにする。そう。あの【妖樹の森】の中で約束したとおりにご馳走を食べに、ドレスアップしたロココを連れて高級食事処へ。
いまの綺麗にして着飾ったロココなら昼間のように門前払いを食らったり、ドレスコードに引っかかることもまずないだろう。
「あ、ノエル……! なんだかすごくいいにおい……!」
「ああ。もうすぐ目的地だし、この辺りは食事処も多いからね。――って、ちょっと待って!?」
「じゅる……! ごちそう……!」
いてもたってもいられなくなったのか、においにつられて走りだしたロココの背を追う。そんなとき、僕の頭に娼館を去るときに見た最後の光景がふっ、とよぎった。
そういえば、あれ結局なんだったんだろう?
「いい? ロココちゃん! わたしがあげたとっておきの
「……うん。ありがとう」
暗殺者として鍛えた僕の耳が拾った、別れ際にお姉さんのひとりとロココがしていた内緒話は。
♦♦♦♦♦
本作を面白いと思って頂けましたら、是非タイトルページで☆による評価、作品フォローや応援をお願いいたします!
読者様の応援が作者の活力、燃料です!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます