第13話 連鎖破壊。
「ブフォフォフォ!? なんだ小僧!? いったいどこから現れた!? そして、いきなりなにをいっている!? その犬ッコロは我々【猟友会(ハンターズ)】所属の猟犬だぞ!? お前の格好、見たところ冒険者だというのに、他のパーティーには不干渉という暗黙のルールも知らんのか!?」
朝の光が差しこむ【妖樹の森】の中の広場。
いままでは急展開についていけなかったのだろうか。僕とロココのやりとりにいまさらながらに【猟友会(ハンターズ)】のリーダーが水を差した。
足だけは、【大妖樹(ギガントトレント)】がいるこの場から去ろうと動かしたまま。
……本当に最低だな、お前。
まあいいや。きっちり宣戦布告しておくのも悪くない。
「いや、知ってるよ。【猟友会(ハンターズ)】のリーダー、ブッフォン」
「ブフォ!? だったら、さっさと手を引か――」
すっとまっすぐにブッフォンに向けて僕は愛用の黒刀を突きつけた。
「そう。知ってるよ。だから、いまから僕と【
「ブッフォッ!?」
体全体に満遍なくいき渡っている魔力を手と足に集中。
もう一度頭の中に軌跡を描くと、僕は高速で戦場を駆けだした。
「うおおおおおっ!」
『ギュイイァァッ!?』
まずは
ロココが呪紋で動きをおさえているそれを僕の接近に気づいたと同時に一撃で破壊。右手の黒刀にその魔力を
『『『ギュイイァァァァァァッ!?』』』
直線の最短軌道で軌跡を描きながらそれを7回繰り返し、
【猟友会(お前たち)】をどれだけ許せなくても、怒っていたとしても、僕はひとを殺さない! でもそのかわり、
「お前たちのせいでロココが受けた苦しみ、思い知れ!」
「がああっ!?」
「ぐべっ!?」
「ぎゃうっ!?」
「ばがっ!?」
「ブッブォォォッ!?」
今度は高速ですれ違いざまに、逃げようとしていた【猟友会(ハンターズ)】5人の足を黒刀を納めた鞘で思いきり割り砕く。その破壊した足部分の魔力を鞘へと吸収。
そして、仕上げは――
「ふっ!」
――【猟友会(ハンターズ)】5人分の足の魔力を蓄えた鞘を【大妖樹(ギガントトレント)】へと向かって放り投げる。
最後の軌跡は直線。矢のようにただ一点を刺し貫く!
「うおおおおおっ!」
僕はすべての魔力を手と足に集中して、【大妖樹(ギガントトレント)】へとまっすぐに跳んだ。
パキィィィンッ!
まず、黒刀の切っ先でその手前にある僕の鞘を貫き、バラバラに割り砕く。
これで鞘を含めた13の魔力すべてが黒刀一本へといき渡った。
魔力とは大量になればなるほど扱いが難しくなる極めて繊細なもの。当然こんな無理やり一点に集中させた大量の魔力を長い時間とどめていることなど、魔法使いでもない僕にはできはしない。
だから、それを逆手にとり、そのままこの暴発寸前の魔力をすべて黒刀の切っ先に乗せて【大妖樹(ギガントトレント)】を貫き、そして内部で一気に爆ぜさせる!
そう、これが僕の切り札のひとつ!
「レイス流暗殺術奥義ノ弐!
『ギュィィィィィィァァァァァァァァァッ!?』
大地を揺るがすかのような轟音。
体内で起きた膨大な魔力の爆発に耐え切れず、【大妖樹(ギガントトレント)】の幹に風穴が開いた。
勢いのままに向こう側まで刺し貫いた空中の僕のすぐそばを緑色に光るこぶし大程度の大きさの
これが、あの【大妖樹(ギガントトレント)】の核。この核を割り砕くか、一定時間体内から離すことで【大妖樹(ギガントトレント)】はその活動を完全に停止する。
『ギュィィィッ!』
最後のあがきか、風穴を開けた【大妖樹(ギガントトレント)】からうぞうぞと大量の枝が核へと伸びた。
だが。
「だめ……! させない……!」
枝が届く寸前、その核をロココの赤い呪紋がからめとる。
『ギュ……ィ…………』
そしてそのまま、決して枝が触れないように完全に核を呪紋で包みこむと、行き場をなくした枝を無意味にぷるぷると振るわせながら、【大妖樹(ギガントトレント)】は完全にその活動を停止した。
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