豚の心臓
@goti5104
第1話 残酷な神が支配する
西暦20XX年、ここは平和な街だった。人々は平和に暮らし何一つ不自由ない暮らしをしていた。この街で生まれ育った冬馬もまた、そんな生活をなんの疑問も持たずに享受していた人間の1人だった。冬馬は今年20歳になった。大学での生活にも不満はなかった。大学に入ってからサークルにも積極的に参加し、初めての彼女もできた。彼女は名を真理といい、環境経済学部を専攻していた。冬馬はフランス文学部を専攻し、バルザックを研究していた。時たま自分で小説を書くこともあり、真理に書いた小説を見せたりしていた。真理からは「トーマ君」と呼ばれていた。今日はサークルでの飲み会がある日だった。午後4時46分、冬馬は居酒屋「とん兵衛」に自転車で来ていた。店にはすでに同学年の峯田、先輩の磯崎がいた。冬馬が挨拶をすると、磯崎が話しかけてきた。
「おう、神谷。早いじゃねえか」
「初めてのコンパ楽しみだったんですよ」
「そりゃいい。今日はふぐ料理がでるらしいから楽しみにしとけよ」
そんな会話をしていると徐々に人が集まってきた。冬馬はサークルでも人気者で、いろんな人に話しかけられた。場が温まったところでそろそろ店に入ろうかということになった。暖簾をくぐると割烹着の店員が
「へい、らっしゃい!」
と挨拶をした。店に入ると同学年の保田が話しかけてきた。
「ところで真理ちゃんとはよろしくやってるの?」
「まぁそれなりにね」
冬馬は曖昧に返事をした。真理は彼がサークルで活動をしているということをあまり良くは思っていない。もしかしたらサークルの女の子に自分を取られると思っているのかもしれない。それは無邪気な発想だ。部員が思い思いに話の花を咲かせていると料理が運ばれてきた。最初はキムチだった。冬馬は運ばれてきた料理に箸をつけた!悪くない。出汁がよく効いている感じで辛すぎもなく丁度良かった。映画サークルの部員は口々に今年見た映画の感想や時事ニュースなどを話し合った。その中でゲノム編集のことが話題にでた時冬馬はすっぽんの刺身を食べていた。
「でもさ、ゲノムを編集するって凄くない?よくわからないけど」
「うん。凄いけど倫理的にどうなんだろ」
すっぽんに酢味噌をつけながら冬馬は言った。
「人体をいじるってことだよね。それってやっぱりいろいろ問題があるんじゃないかな」
運ばれてきた料理はどれも味つけが丁度よく絶品だった。話もひとしおにそろそろ帰ろうかということになった。勘定を幹事の塩谷が済ませている時冬馬は先ほど話題にでたゲノム編集のことを考えていた。先ほどは否定的だったけど、よく考えたら素晴らしいことなのでは無いのか。外は年末ということもあり、寒かった。マフラーを巻いてきてよかったと冬馬は自転車にまたがった。自転車をこいでいる時真理からLINEが来ていたことに気づいた。自転車に乗りながらスマートフォンをいじることは良くないことだと走りながら彼はLINEを見た。「早く帰ってきてね」そしてスマートフォンをポケットにしまった時、前方から強い光が見えた。冬馬の前方にはトラックが突っ込んでくるのが見えた。
豚の心臓 @goti5104
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