愛してない
爪木庸平
愛してない
ずっとわろてる。
あなたの話おもろいし、おもんない話は聞かんかったことにするし。いくら仲がいいとは言っても全部を全部受け止めることはできん。おもんない話は調子乗ってる時にやたら暴力的な話ぶりになって怖くなるやつ。普通に怖い。普段はそんなことないって知ってるから嫌いにはならんけど。
はい?
……えー、どうかな。恋愛とかではないよ。そもそも恋愛とかあんまわからんねん。
まあ友達でええやん。いや?
そんな顔したってさあ。まあまあ困る。
なんかごめん。
いやこっちこそ。
恋愛はしてみたいよ。素敵な相手おらんかなと思って探してる。ええなあって思った相手は大体彼女か奥さんおるねん。
恋愛とかではないよあなたは。
こういう話やめへん?
やめへんっていうのはこういう話しててあなたがつらくないかなと思ったから。別につらくないんやったらええけど。
でも自分を振った相手がどうしても欲しいっていうのがわからんねん。切実さが。
気まずくないんやったらこれからも会うけど全然。ええの? つらくないんやったら別にええけど。
まあ、頑張ってな。応援してるわ。
マッチングアプリとか始めたらええやん。向いてる人は向いてるらしいで。そういうのうまそうやん。
知り合いはやめといた方がええんちゃう? 知らんけど。
愛してはないな。友達としては好きやで。
うまくいかない港に船舶が複数停泊している。僕は遠くからそれを眺め、近くに寄って細部を見渡す。船には個性がある。その全てをここで記すことはできないけれど、僕はそのいずれからも畏敬の念を抱かされた。海を渡っているんだ。彼女らにとって、この僕の港は一つの通過点に過ぎない。
ランニングを始めた。最初はルートの構築が難しかったけど、慣れたらなんてことはない。要は自分と街の距離を近づけて、できるだけ現実的に考えればいいだけだ。
正直いい効果は期待できない。体重は減って体や顔つきはシャープになるだろうが、その程度の成果で救える精神ではないのだ。自己憐憫。膝に負荷だってかかるだろうし。
音楽は聴かない。色々試したけれど、走りながら使うに心地いいイヤフォンを見つけることができなかった。
街のホワイトノイズを聞くのが一番大事だ。街は生きている。その呼吸音を聞く。僕よりも前から生きていて僕が死んだ後も生き続けるであろうこの街。
ある島国で火山が噴火したらしい。夜はそのニュースを見て過ごした。生活、どころか地面すら吹き飛んで消える瞬間があるなんて。
噴火か隕石か核爆弾かぐらいだろうそんなことができるのは。
地面すら吹き飛んで消える瞬間があるやん。その時何が起きてたかってもう誰にもわからん訳やん。そういうの書いたら?
愛してない 爪木庸平 @tumaki_yohei
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