第7話 俺は決意を新たにする。
当たり前だが、デートが終わっても俺たちの日常は続く。
デートの結果は上々で、後半はお互いの眠気に負けてぐだったが、最高に可愛い双葉を堪能できたし、双葉との距離が少し近づいた気がする。
次の目標設定について考えねばならないが、やはり軍師には判断を仰がねばなるまい。
デート翌日の日曜日、首尾の報告と共に意見を頂戴することにした。
「姉上、以降の動きについてご相談を願いたく。」
デートの経緯を説明し終えた俺は、献上したダッツ様・いちご味を口へ運ぶ姉にお伺いを立てる。
口からスプーンを抜いた姉の答えは簡潔だった。
「唇を奪え。」
「は?」
「壁ドンからのキスだ。離れで2人きりで過ごすお前にはいくらでもその機会があろう。」
「いやお前、初デート後にいきなりそれは、さすがにがっつき過ぎじゃねーの?」
「ふん、惰弱な。分かっておらぬようだな。貴様は今、判断を間違えようとしておる。」
「なんだと?」
愛の知将は、学習机に肘をつき、反対の手でスプーンを俺に突き付けながら語る。
「ではいつ迫るのだ? これからデートを重ねて、その間にいい雰囲気になったら、とでも抜かす気か? 阿呆め。それは今までの状況にデートと言う習慣が追加されたにすぎぬ。」
「・・・た、確かに・・・。」
「本来、初デートの締めに初キス、が理想的な流れではあった。だが恋愛弱者の貴様にそこまで求めるのは酷よ。故に伝えなかったし、実際、貴様らの初デートでそれは無理であった。」
「・・・。」
ぐうの音も出ない。
けどやっぱり、大切な女性への迫り方としてはちょっと強引というか性急な気がする。
「クク、納得しづらい、というツラよな。」
もう一口、いちご味を口へ運ぶ姉。
「少しかみ砕いてやろう。貴様は我の蔵書から『NTR』の概念を学んだな?」
「は。」
「なぜ大切な女を寝取られるのか?それは手をこまねいているからよ。『大切にする』などという子供だましの綺麗ごとにかまけて己が手を伸ばそうとせず、己の汚くも強い愛を女に示さない、怠惰な弱者であるが故よ。『大切にする』のは己のものにしてからでよいではないか?それをせぬから、それをできる者に寝取られるのよ。」
俺を静かな雷が貫いた。
それは真理の雷だった。
「奪い取れ。疾く。お前の女はそれを待っていよう。」
椅子を回し、姉は俺に背を向けた。
その背に俺は膝をつき、静かに頭を下げる。
「次は吉報を届けよう、姉上。」
瞳には決意の光。
俺の心臓は強く鼓動を始めた。
◆◆◆
必要なのは、段階と見極めだ。
姉の語った「手を伸ばせ」「奪い取れ」とは、「現状に甘んじるな」という意味と判断した。
確かに初デートがまあまあ上首尾だった俺は、日和っていたらしい。
もっと先のことはひとまず置くとして、現在の目標は「可能な限り早期のキス」。
考えなければならないのは、必勝の道筋だ。
「手を伸ばしたら振り払われた」、つまり「キスをしたら嫌われました」では目も当てられない。
そこから関係を修復するのは困難で、時間も要することになる。
俺が一手遅れれば、未だ見えざる仮想敵、NTRクソ雑魚野郎は一手を進めてしまうかもしれない。
失敗も遅れも許されない。俺は常に背水の陣で臨まなければならないのだ。
さて、では「唇を奪う」の前の次の一手は・・・「ハグ」だな!
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