第2話
「ゆっくり時間を作って、温泉にでも行きたい……」
そんなことを思ったのは、スーパーで買物の途中、たまたま入浴剤を目にした時だった。
いわゆる温泉の素というやつだ。
なるほど、温泉へ行きたくてもその時間がない人向けに、こうした商品が売られているのか。
早速ひとつ買ってきて、私も使ってみた。
レモンを思わせる黄色だが、お湯に溶いてみると、柚子みたいな香りだ。
「ふうっ……」
でも、まだ温泉旅行という気分には一味足りない。何かもう一つ加えれば……。
「!」
入浴効果で、頭も冴えたのだろうか。
一つのアイデアが浮かんでくるのだった。
次の日の夜から、入浴前の日課が出来た。
押し入れから昔の鉄道模型を引っ張り出して、走らせて遊ぶのだ。
使うのは「EF65(1000番) 24系25形(ニューブルートレイン)編成」のセット。ただしテールマークは見ないようにして、これを「富士」でも「はやぶさ」でも「あさかぜ」でも「出雲」でもなく、「銀河」に見立てて走らせる。
ブルートレインには一度も乗ったことがない私だが、鉄道に対する興味をなくした後で、どこかの駅で一度だけ実物を目にしたことがある。
それが「銀河」だった。
自分がその中に乗っている気分で、模型のブルートレイン「銀河」を走らせて、それから温泉の素を入れた風呂に
「おお、これは……!」
目を閉じれば、まさに温泉旅行の気分だ。
寝台列車に乗って温泉地まで行き、そこで温泉を楽しむ。そんな妄想に
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