言葉の階層を合わせる

 前回は敬語についてだったので、今回は語彙について。


 言葉には「ほとんど同じ意味だが堅さが違う」というものがあります。

 例えば「へんなの~」「おかしい」「お門違い」「荒唐無稽だ」

 どれも似たような意味ですが、言葉の硬さも受けるイメージも全く違います。

 ですから一つの文の中に同じ硬さの言葉を使えば、文全体の硬さも整って読みやすくなります。


 例えば下の二つの文はほとんど同じ意味ですが、印象は全く違います。


「なんかそういうのってへんなの~って思ってガチで文句言ってみた」


「その言い分はお門違いと感じたので厳重に抗議した」


 前者は子供か若者が友達同士のやり取りなどで口にしそうな言葉ですし、後者はやや形式ばっていて、役所などの公的な場のやり取りに対しての言及に思えます。

 それでは硬さの違う言葉を入り混じらせるとどうなるでしょう?


「なんかそういうのって荒唐無稽って思ってガチで抗議した」


 文の語り手がどんな人なのか、イメージが固まりませんね。

 こうして使う言葉の硬さを合わせる事で、語り手がどのような人でどんな状況にいるのかを表現することができます。 


 逆に、故意に言葉の硬さを揃えない事で立場の定まらない不安定な語り手を表現する事もできそうですが、気を付けないと単なるまとまりがなくて読みづらい文章になってしまうので要注意ですね。


 こうした言葉の硬さもうまく利用すると、説明的な文を抜きにして状況や語り手の立場を端的に表現できるので、積極的に使いこなしたいですね。

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