WEB文法について
時々プロフィールやご自分のレビュー集などに「行頭があいてない作品は読む気にもならないので全部☆×一です」「…は偶数個使わなければならないのにそんな事も守れない作家の文章は全部クズです」というようなことを堂々と書いておられるユーザーを見かけます。
たしかに、行頭は一文字あける、三点リーダーは偶数個セットで使う等、WEB小説特有の作法というものがあるのは確かです。
ただし、それらの「WEB文法」が「正しい日本語」かと言えば、必ずしもそうではありません。
例えば『」』の前の句読点は省く、は出版業界特有のルールです。小中学校の国語の教科書を読めば『」』の前にも句読点を書くよう指示されており、入試の小論文などで省いたりすれば確実に減点対象となるでしょう。
三点リーダーは偶数個セットで使う、というルールも出版業界のローカルルールです。
かつて手書きの縦書き原稿が当たり前だった時代、締め切りに追われる作家さんが必死に書いた原稿では「…」と「ミ」を見間違える事が多く、誤読を防ぐために偶数個のセットで使うことが業界の慣習になったのだそうです。
他にも疑問符や感嘆符の後に半角スペースを入れるのは、半角記号のせいで段組みがズレるのを防ぐためだとか。入試の小論文で、わざわざ空白を入れる必要はないようです。
会話文の前後は空白を入れる、などは言わずもがなですね。
その割にワタクシもこれらのWEB作法をだいたい守って執筆しています。少なくともカクヨムとノベプラではおおむね守っています。
それはなぜかと言えば、ただ単に「その方がWEBで見た時に読みやすいから」という、ただ一語につきます。
WEB小説は通勤通学の電車内など、隙間時間にスマホで読む方がとても多いです。そのため、スマホで読む時に目滑りしないかということが読み手の読みやすさを大いに左右します。
そのため、基本的にワタクシ個人はWEB作法というものも概ね守るよう心がけています。
ただ、そのWEB作法というものはあくまでWEB小説限定のローカルルールであり、それを他の作家に押し付けるのは見当外れも甚だしい事は念頭に置いておく必要があります。
ですから、他の作家さんに「あなたの作品はWEB小説の作法を守っていない!正しくはこうすべきだ」と説教してしまうと「それは現時点での正しい日本語の文法に背いている」というごく当然の指摘を受ける事になる可能性も高いです。
更に、その指摘をしてしまった相手が日本語研究や日本語教育のプロだったりする事もあり得ますので……
もちろん、言語はその時代や文化に合わせて変化するものであり、現時点での文法が百年後には変わっている可能性はあります。
ただし、「現時点」での文法はWEB文法とは似て非なるものも頭の片隅に入れておきたいですね。
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