いろ

バブみ道日丿宮組

お題:淡い視力 制限時間:15分

いろ

 他の人と違うと知ったのは幼稚園の頃。

 赤が赤ではなく、黒が黒でなく、色彩が淡い世界が見えてた。

 だからこそ、お絵かきをすると自然と不可思議なものができあがる。

 中学生になる頃には、だいぶ落ち着いてきた。

 空は青、黒板は緑。太陽は赤。月は白。

 言葉で覚えた。

 不便というふうに感じたことはない。信号はわかるし、電車が何分にくるのかもわかる。

 ただ淡いだけ。

 見えないっていうことじゃない。視力自体は2.0もある。メガネは不要だ。

 それでもいじめのようなことはなくならなかった。

 わからないのが面白いのか、クイズを出された。間違えたら、給食のデザートをとられるという鬼畜仕様だった。もちろん、間違えた。いつものことだと割り切るしかなかった。

 いじめの現状は程度が低いものだ。殴られるとか、蹴られるとか、はぶかれるとか、そんなことはない。みんなただいじってくるだけで、場合によりけりだが丁寧な対応をしてくれる。

 修学旅行で色が鮮やかな街に来たときに視界情報を処理しきれなくなってふらつくと、いじめてたやつが面倒を見てくれたりした。

 そんなことが何回もあった。

 体育の授業ではボールの存在が曖昧なので、僕の近くにいるときはみんな気を使ってゆっくりしてくれてる。本当は本気で遊びたいのだろうが、遠慮してくれてるのだ。

 申し訳なくなるくらいに、ほんとうにいい人たち。

 いじめという言い方は正しくないのかもしれない。

 もっともそれは受ける側の問題であって、なにごともいじめだと思うのならば、それはいじめになる。

 自分の色もわからない。

 わりと白いらしいが、他人とあまり大差なく見える。

 ……身体つきは、だいぶ子どもっぽいが、これからがきっとある。

 成長したら、より一層色彩が見えなくなると言われてるが、いまのところ変化はない。

 淡い世界が広がってる。

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いろ バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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